これまでの投稿の中で何度か登場した源泉徴収制度の概要と、給与の源泉徴収について取り上げます。

源泉徴収制度とは

所得税法で定められた一定の種類の金銭を支払う場合、支払人は、あらかじめ税金を差し引いて受取人に支払い、(課税される)受取人に代わって、差し引いた税金を納める必要があります。この仕組みを源泉徴収制度といいます。

源泉徴収制度は、税金を集めるための事務を簡素することを主な目的として、昭和15年に導入されました。

源泉徴収の対象となる所得

源泉徴収の対象となる金銭の支払い(所得)のうち、主なものは次のとおりです。

  • 給与
  • 退職金
  • 報酬、料金
  • 利子
  • 配当

また、それぞれの所得のうち源泉徴収の対象となるものが、限定列挙で明示されています。

源泉徴収義務者

法人税、消費税などは、申告を行う会社や個人が納税者(=税金を納める義務がある者)として、自らが所得及び税額を計算して申告納付します。

これに対し、源泉徴収制度では、源泉徴収義務者という者が納税者として置かれ、所得及び税額を計算して申告納付します。

源泉徴収義務者は、源泉徴収すると定められている所得を支払う者です。

例えば、

  • 給与、退職金→給与、退職金を支払う雇用主
  • 報酬、料金→業務等の委託者
  • 利子→銀行など
  • 配当→配当金を支払う会社など

が源泉徴収義務者となります。

法人(学校や官公庁を含む)は必ず源泉徴収義務者となります。

個人は、次のいずれかに当てはまる場合は、源泉徴収する必要はありません。

  • 常に2人以下のお手伝いさんなどのような人だけに給与や退職金を支払っている人
  • 給与や退職金の支払がなく、弁護士報酬などの報酬・料金だけを支払っている人(例えば、従業員を雇っていない個人が確定申告のために税理士に報酬を支払う場合など)

納税義務の転換

法人税、消費税などは、税金の納付漏れや計算誤りがあった場合には、会社や個人が自ら修正申告や不足分の税金の納付を行い、ペナルティも会社や個人に直接課せられます。

他方、源泉所得税について納付漏れや計算誤りがあった場合には、不足額は源泉徴収義務者である雇用主や会社が納め、ペナルティも源泉徴収義務者に課せられるのが特徴です。

ただし、実際に課税されているのは、給与を受け取った従業員や報酬を受け取った個人です。雇用主や会社が追加で税金を納めた場合、この者たちとの関係では立替払いをしているだけですので、立替払いした金銭を従業員や報酬を受け取った個人に請求することになります。

給与所得の源泉徴収

源泉徴収税額表の構成

経営者の方の中には、「源泉徴収税額表」を見たことがある方もいらっしゃると思います。

縦軸の給与の額と横軸の扶養の人数の交差するところの税金を天引きするんだよね、という感覚でしょうか。

給与の支払いに関する源泉徴収税額表は次のような構成になっています。

  • 月額表(甲、乙)
  • 日額表(甲、乙、丙)

甲欄とは

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(以下、扶養控除等申告書という。)を提出する人に支払う給与に適用する税額です。

扶養控除等申告書は、年末調整で従業員に書いてもらう、この書類です。

扶養控除等申告書は、給与をもらう先が複数ある場合には、そのうちの

扶養控除等申告書を提出した従業員については、中途退職した場合等を除き、雇用主が年末調整を行い、1年間の所得税の精算をします。年末調整の対象でない所得控除(医療費控除など)がある等の理由で本人が確定申告する場合を除き、所得税に関する申告・納税は年末調整で完結します。

なお、扶養控除等申告書は、1年(1月〜12月)の最初の給与支給日の前日までに提出してもらう必要があります。

このため、年末調整の時に翌年分を書いてもらうことが一般的なのです。

扶養控除等申告書は必ずもらう!

アルバイトなどの入退社が頻繁な会社では、扶養控除等申告書を提出してもらえないうちに従業員が退職してしまう、ということもあるかと思います。

しかし、これなしで甲欄の税額を徴収していると、徴収不足の追納とペナルティは源泉徴収義務者である雇用主が負うことになります。

不足額は本人に請求できるといっても、退職してしまっていればそうもいかず、結局、雇用主が損をしてしまいます。

従業員を採用したら、自社・自分のためにも、必ず、扶養控除等申告書をもらうようにしましょう!

乙欄とは

甲欄を適用する人および日雇の人以外に支払う給与に適用する税額です。

例えば、アルバイトのかけもちをしている従業員で、別の会社に扶養控除等申告書を提出している人に給与を支払う場合、この乙欄の税額を天引きします。

乙欄の税額は甲欄よりも高くなっています。しかし、本人が確定申告をすることにより、天引きされすぎている税金を取り戻すことができます。

月額表と日額表

月額表を使うのは、次のような場合です。

  1. 月ごとに支払うもの
  2. 半月ごと、10日(旬)ごとに支払うもの
  3. 月の整数倍の期間ごと(2ヶ月ごとなど)に支払うもの

日額表を使うのは、次のような場合です。

  1. 毎日支払うもの
  2. 週ごとに支払うもの
  3. 日割りで支払うもの
  4. 日雇賃金

継続的な雇用契約のある方に、①1日ごと、②週ごと、または③日割りで給与を支払う場合には、扶養控除等申告書をもらっていれば日額表の甲欄、もらっていなければ乙欄の税額を使います。

④は、2ヶ月以内の期間で日々雇い入れ、働いた日ごとに給与を支払う場合で、丙欄の税額を適用します。

年末調整とは

毎月、天引きする源泉徴収税額は、いわば概算払いのようなもので、実際には、年の途中で給与の金額や扶養親族の数が変わることもあり、それらが反映されないことがあります。

また、生命保険料控除や地震保険料控除は、年末調整の際に処理することとされています。

このため、年末にこれらを集計してその年に納めるべき税額を計算し、1年間に天引きした税額の合計との差額を、追加で天引きしたり還付したりして精算することが必要となります。

これが「年末調整」です。

アメリカなどでは、給与からの源泉徴収はあるものの、精算は個人一人一人が申告して行います。日本では、その部分をも源泉徴収義務者である雇用主がやっている(やらされている?)というわけです。

みんなが申告書を提出したら税務署の事務は大変なことになるでしょうから、事務の簡素化に貢献している制度とも言えます。

おわりに

平成28年度のデータでは、源泉所得税が税収全体に占める割合は約26.1%、源泉所得税のうち給与にかかるものは約62.1%、合わせると、源泉徴収義務者は、税収全体の約1/5である16.2%の申告と納税を担っているということになります。

その割には、自身が源泉徴収義務者であり納税義務を負っている、という認識が薄い会社や個人事業主も見受けられます。

また、源泉徴収される側、特に給与所得者は、自分の税金がどのように計算された結果いくらなのかを把握していなかったりします。その結果、自ら納税している、というよりも、税金を取られているという感覚が強いのではないかと思います。

このことが、国にとって都合がいいのか悪いのかはわかりません。

ただ、源泉徴収する側もされる側も、まずは制度を正しく理解し、自分たちの役割を認識したり、取られているのではなく自分が納めている税金であるという意識を持つことが大切なのではないかと思います。

おわり。

今日の花

ヒペリカム(オトギリソウ科、原産地:北米他)

赤く艶のある実が特徴的です。緑やピンクの実のものもあります。夏はヒマワリなどと合わせて夏らしく、冬は赤い実とグリーンでクリスマスらしく。1枝あるだけで楽しめます。