長野県のある会社が、外国人技能実習生の向けの寮を1億5千万円をかけて新築するというニュースがありました。待遇改善により、実習生の労働意欲の向上や受け入れ拡大につなげたいとのことです(2018年11月22日付日本経済新聞電子版)。

役員が会社所有の住宅を使ってその家賃を払っていなかったという話題は最近もありましたが、従業員が寮に住む場合も似たような話になります。

今回は、金銭以外の給与について取り上げます。

現物給与とは

給与は金銭で支給されるのが原則ですが、食事の現物支給や商品の値引販売などのように次に掲げるような物又は権利その他の経済的利益をもって支給されることがあります。

  1. 物品その他の資産を無償または低い価額により譲渡したことによる経済的利益
  2. 土地、家屋、金銭その他の資産を無償または低い対価により貸し付けたことによる経済的利益
  3. 福利厚生施設の利用など②以外の用役を無償または低い対価により提供したことによる経済的利益
  4. 個人的債務を免除または負担したことによる経済的利益

従業員に社宅や寮を貸与する場合

従業員に社宅や寮を貸与する場合は、タダで貸してしまうと、②の「土地、家屋、金銭その他の資産を無償または低い対価により貸し付けたことによる経済的利益」を従業員が受けている、すなわち賃料見合いの現物給与を支給されていることになってしまいます。

冒頭の自社所有の寮などの場合、次の①~③を合計した「賃貸料相当額」の50%以上を従業員から家賃として徴収すれば、従業員に現物給与を支給していることにはなりません。

  1. (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
  2. 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
  3. (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

借上社宅(会社が建物の貸主と契約して部屋を賃借し、従業員を住まわせる)の場合も同じ計算になりますが、貸主から固定資産税の課税標準額を聞き出すことは難しいと考えられます。

賃料は固定資産税や諸経費をまかなって利益が出るように設定されますので、賃料の50%以上を従業員から家賃として徴収すれば、通常は問題ないといえます。

留意点

  • 賃借物件の場合、従業員個人の名義で契約した物件の賃料を補助する場合や、住宅手当を支給する場合は、いずれも給与となります。
  • 水道光熱費は、居住する個人が利用するものですので、会社が補助する場合は原則として給与となります。

金銭の貸付

従業員に金銭を貸し付けた場合、無利息で貸してしまうと、②の「土地、家屋、金銭その他の資産を無償または低い対価により貸し付けたことによる経済的利益」を従業員が受けている、すなわち利息見合いの現物給与を支給されていることになってしまいます。

利息相当額は、次のいずれかの利率で計算した金額です。

  • 会社が他から借り入れて貸し付けた場合…その借入金の利率
  • その他の場合…貸付けを行った日の属する年に応じて、国税庁が定める利率
    ※平成30年中に貸付けを行った場合は1.6%です。

ただし、次のような事情がある場合には、無利息や上の利率よりも低い金利で貸し付けた場合であっても、給与にはなりません。

  1. 災害や病気などで臨時に多額の生活資金が必要となった従業員に、その資金に充てるため、合理的と認められる金額や返済期間で金銭を貸し付ける場合
  2. 会社における借入金の平均調達金利など合理的と認められる貸付利率を定め、この利率によって金銭を貸し付ける場合
  3. ①及び②以外の貸付金の場合で、上記①の利率により計算した利息の額と実際に支払う利息の額との差額が1年間で5,000円以下である場合

最近、給与の前払いを福利厚生の一環として取り入れる会社がありますが、前払いを無利息の社内貸付扱いとするケースがあるようです。

この場合、前払いした日から本来の給与支給日までの期間の貸付ということになり、少額でごく短期間の貸付であって、無利息としても③に該当し、給与にはならない、という整理なのかなと思います。

従業員レクリエーション旅行(社員旅行)

従業員レクリエーション旅行については、その旅行が次の要件をいずれも満たす場合は、旅行の費用を旅行に参加した人の給与としなくてもよいことになっています。

  1. その旅行によって従業員に供与する経済的利益の額が少額の現物給与は強いて課税しないという少額不追及の趣旨を逸脱しないものであると認められること
  2. その旅行が次のいずれの要件も満たすものであること
  • 旅行の期間が4泊5日以内であること。海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内であること。
  • 旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること。工場や支店ごとに行う旅行は、それぞれの職場ごとの人数の50%以上が参加すること。

留意点

  • ①、②の要件も満たしている旅行であっても、自己の都合で旅行に参加しなかった人に金銭を支給する場合には、参加者と不参加者の全員にその不参加者に対して支給する金銭の額に相当する額の給与の支給があったものとされます。
  • 次のようなものは、従業員レクリエーション旅行には該当しないため、その旅行に係る費用は給与、交際費などとして適切に処理する必要があります。
  • 役員だけで行う旅行(役員報酬)
  • 取引先に対する接待、供応、慰安等のための旅行(交際費)
  • 実質的に私的旅行と認められる旅行(役員報酬または給与)
  • 金銭との選択が可能な旅行(役員報酬または給与)

まとめ

現物給与となるものは意外と多いです。ここでは取り上げませんでしたが、食事代、研修費などについても規定があります。

従業員の場合には、福利厚生との境目がわかりづらいです。福利厚生とするためには、福利厚生規程があることや、従業員が平等に享受できることが前提となります。

また、少額不遡及の趣旨(豪華すぎない、一般常識を逸脱しない)に照らしてどうか、というところも検討すべきポイントです。

人不足のご時世。工夫して少しでも福利厚生を充実させ、定着率の向上や募集人員の増加につなげたいですね。

今日の花

クジャクヒバ(ヒノキ科、原産地:日本)

何度もクジャクヒバでリースを作っているのに、クジャクヒバ=檜(春の花粉症の原因)の園芸品種と初めて知りました。花が咲いていないのでくしゃみは出ませんが、見る目が変わる・・・。