前回、固定費と変動費の分類を使ってする「損益分岐点分析」についてご紹介しました。
今回は、損益分岐点の考え方を使った予算や予測の計算についてご紹介します。
損益分岐点とは(おさらい)
損益分岐点とは、売上高と費用が同じになる売上高(または販売数量)のことをいい、式で表すと次のようになります。
(損益分岐点)売上高=固定費+変動費
固定費は、稼働の状況にかかわらず一定に発生するコストですので、売上高から変動費を差し引いた残りの利益(=「限界利益」)が固定費を上回るか否かで赤字か黒字かが分かれます。
- 売上高から変動費を差し引いた残りの利益=固定費で損益トントン ←このときの売上高が「損益分岐点」
- 売上高から変動費を差し引いた残りの利益<固定費で赤字
- 売上高から変動費を差し引いた残りの利益>固定費で黒字
予算の作成に使う
売上高から変動費を差し引いた残りの利益>固定費で黒字
すなわち、限界利益-固定費の金額が利益になるので、一定の利益を獲得するために必要な売上高を逆算することができます。
例1
変動費率20%、固定費年額1,200万円の場合、損益分岐点は次の通りです。売上高をXとすると、
X=0.2X+1,200万円
0.8X=1,200万円
X=1,500万円
例2
変動費率20%、固定費年額1,200万円で、税引前利益を200万円獲得したい場合は次の通りです。売上高をXとすると、
X=0.2X+1,200万円+200万円
0.8X=1,400万円
X=1,750万円
予算を作る場合は、売上目標から立てるのではなく、利益から逆算することがおすすめです。
上の例で、税引前利益を200万円獲得したい場合に必要な売上高は1,750万円と計算されましたが、過去の実績と比べてあまりにも大きな金額であれば、利益目標が大きすぎるか、コストが大きすぎるかですので、いずれかを見直す必要があるでしょう。コストを見直す場合には、固定費が大きすぎるのか、変動費率が大きすぎるのかに分けて検討する必要があります。
予測の作成に使う
今年(今年度)どれくらいの利益が出て、どれくらい納税が必要なのかをシミュレーションする際にもこの考え方を使うと便利です。
例
1~12月の事業年度で、1~3月の売上高累計が480万円、変動費累計が96万円(20%)、固定費累計が300万円(100万円/月)、利益累計が84万円とします。
売り上げが好調で、4月~12月の売上見込みは180万円/月、変動費率と固定費額は変わらない見込みとします。
4月~12月の利益予測は次のように計算できます。
{1ヵ月の売上高180万円-変動費(180万円×20%)-固定費100万円}×9ヵ月=396万円
1~3月の利益と合計すると、1~12月の通年の利益見込みは、
84万円+396万円=480万円
となり、これに税率を掛ければ、納税の見込み額も計算できます。
これならいい、と思うか、節税したい、と思うかで、対策を考えることができます。
他にも、
- 売上に季節的な変動
- 臨時的な支出(オフィスの引っ越し、ボーナスの支給など)
などがわかっている場合は、これらを加味すると予測の精度が上がります。
おわりに
経費の一般的な分類(勘定科目としてみかけるもの)から始まり、経費の発生要因を売上(稼働)増減とかかわらせて分類する「固定費」「変動費」の考え方をご紹介しました。
この考え方を使うと、赤字と黒字の分かれ目になる売上高(損益分岐点)や目標売上高を逆算したり、進行中の年度の利益・納税予測を行うことができます。
ご自身の会社や事業の決算書を取り出し、固定費と変動費という目線で見直してみてはいかがでしょうか。
今日の花
ガーベラ(キク科、原産地:南アフリカ)
iPhoneでの撮影にも慣れてきましたが、カメラが直るまでには1ヶ月弱かかりそうです。今日は、少し珍しい、クリーム色のガーベラです。ガーベラの色や形は本当に増えたな、と思います。4月18日はガーベラ記念日だそうで、ご近所に新しくできた花屋さんにもすてきなガーベラがたくさん入荷予定のようです。その週の花の写真はガーベラで決まりです。お楽しみに!