eスポーツの国際大会で優勝者に提供される賞金にかかる課税関係を見ています。

前回は、賞金にかかる税金の概要についてまとめました。

開催地=日本、優勝者=日本人選手の場合

日本人選手は居住者とします。

所得税

居住者ですので、獲得した賞金には日本の所得税がかかります。

プロ選手として獲得した賞金ですので、所得の種類は「事業所得」となります。

源泉徴収の要否(主催者側)

一定の報酬・料金等を支払う場合には、支払う側が、所定の税率で計算した所得税をあらかじめ報酬・料金等から差し引いて受取人に支払い、差し引いた所得税を税務署に納めるという、「源泉徴収」を行う必要があります。

今回の大会の場合、「事業の広告宣伝のために賞として支払う金品その他の経済上の利益」という、源泉徴収が必要な所得に該当すると考えられます。

したがって、主催者側は、

(賞金額-50万円)×10.21%

の源泉所得税を差し引いたうえで、優勝者に賞金を支払うことになると考えられます。

消費税

  1. 日本国内での取引であること
  2. 選手はプロとして大会に参加していること
  3. 対価=賞金を得ていること
  4. 選手はプロであり、賞金がかかるとわかっていて大会に参加したため、賞金は資産の譲渡等(役務提供)の対価であること

から、賞金は消費税がかかる取引となります。ただし、選手が課税事業者でない場合、消費税を納める必要はありません。

開催地=日本、優勝者=外国人選手の場合

外国人選手は非居住者とします。

所得税

非居住者の場合、国内源泉所得(日本国内で得た所得)に対してのみ、日本の所得税がかかります。

今回の大会は日本国内で開催されているので、そこで得た賞金は国内源泉所得となります。

非居住者にかかる所得税の課税関係については、次の3つのポイントを確認します。

  1. 非居住者が得た収入がどの種類の国内源泉所得に該当するか
  2. 非居住者が国内に「恒久的施設(PE)」を有するかどうか
  3. 国内源泉所得が恒久的施設に帰せられる所得かどうか

ポイント①国内源泉所得の種類

どの種類の国内源泉所得かを検討する必要があるのは、国内源泉所得の種類により課税方法が異なるためです。

例えば、日本国内で物を売って得た所得、不動産の賃貸料、役務提供の対価などが挙げられます。

今回の賞金については、「国内で行う事業の広告宣伝のための賞金品」に該当すると考えられます。

ポイント②「恒久的施設」の有無

恒久的施設とは、外国の法人または個人が所有する支店、工場等、あるいは、事業に関する契約を締結する権限のある代理人のことをいいます。

今回は、プロ選手とはいえ、世界を転戦するようなスポーツ選手とは異なるため、「恒久的施設」は持っていない、として進めます。

ポイント③恒久的施設に帰せられる所得かどうか

恒久的施設に帰せられる(言い換えると、帰属する)所得とは、恒久的施設が非居住者とは独立した企業と仮定した場合に得られるべき所得であって、具体的には、非居住者と恒久的施設との内部取引等が該当します。

恒久的施設に帰せられる所得であれば総合課税(所得税の申告を行う)、その他の国内源泉所得または恒久的施設を持たない者の国内源泉所得については、所得の種類により、総合課税または源泉分離課税(源泉徴収のみで終了)により課税されます。

恒久的施設を持たない非居住者が得る、「国内で行う事業の広告宣伝のための賞金品」は、源泉分離課税と決まっています。

主催者側は、

賞金額×20.42%

の源泉所得税を差し引いたうえで、優勝者に賞金を支払い、主催者が差し引いた源泉所得税を税務署に納めることにより、優勝者の日本に対する納税義務は完了します。

消費税

賞金に消費税がかかるかどうかは、もらう人に関わりなく取引の内容によって決まりますので、開催国=日本、優勝者=日本人選手の場合と同じく、消費税がかかります。ただし、選手が課税事業者でない場合、消費税を納める必要はありません。

リバースチャージ

仮に選手が課税事業者であった場合、リバースチャージの対象となると考えられます。

電気通信利用役務のみでなく、次のような取引もリバースチャージの対象となります。

国外事業者が、国内において、対価を得て他の事業者に対して行う

  1. 芸能人として行う映画の撮影、テレビへの出演
  2. 俳優、音楽家として行う演劇、演奏
  3. 職業運動家が行うスポーツ競技大会等への出場

③の「職業運動家」は、プロ/アマチュア・ノンプロは問わず、陸上競技などの選手に限らず、騎手やレーサー、大会などで競技する囲碁、チェス等の競技者等も含まれることが明記されています。

eスポーツの選手、はさすがに想定されていないと思いますが、囲碁やチェス等の競技者も含まれるということは、囲碁やチェスを広くゲームとして捉えれば、eスポーツの選手も該当するものと考えられます。

したがって、役務の提供を受けた主催者が、消費税の申告・納税を行うことになると考えられます。

ただし、電気通信利用役務と同様の経過措置(課税売上割合が95%以上の事業者であればなかったものとなる)の適用があります。

開催地=海外、優勝者=日本人選手の場合

所得税

居住者ですので、海外で獲得した賞金であっても日本の所得税がかかります。

プロ選手として獲得した賞金ですので、所得の種類は「事業所得」となります。

外国税額控除

日本と同様、自国内で得た所得に対しては外国人であっても所得税を課税する、というルールになっている国は多いです。

このルールによれば、同じ賞金に対して、日本と外国とで二重に所得税がかけられてしまいます。

この場合、日本で所得税を申告する際に、「外国税額控除」といって、外国で支払った所得税のうち一定の金額を差し引くことができます。

消費税

海外で開催される大会ですので、消費税は対象外です。

まとめ

開催地 優勝者 所得税 消費税
日本 日本人(居住者)
  • 全世界課税
  • 事業所得
  • 源泉徴収される((賞金額-50万円)×10.21%)
課税取引
日本 外国人(非居住者)
  • 国内源泉所得
  • 事業の広告宣伝のための賞金
  • 源泉徴収される(賞金額×20.42%)
課税取引(リバースチャージ)
海外 日本人(居住者)
  • 全世界課税
  • 事業所得
  • 外国税額控除
対象外

所得税と消費税は、同じ国税であっても、課税の趣旨が異なることから、同じような場面で異なる方向に進むことがあります。本や記事だけでは曖昧なため、法令や通達で原文を確認することが欠かせません。

今日の花

スイートピー(マメ科、原産地:イタリア)

フリルのような花びら、薄いピンク色、ほんのり甘い香り。花は季節を先取りします。この花を見始めると、春が来たなー、とわくわくします。いや、これからが冬本番なんですけどね・・・。