租税教育をご存じですか?私は、税理士登録をして初めて知りました。

租税教育とは

租税教育とは、税について学習することであり、税を通して社会を考えることです。

税理士法では、日本税理士会連合会(以下、日税連という。)および税理士会の会則に、租税教育に関する規定を記載しなければならないとされています。

これに基づき、日税連の会則には、租税教育等事業、すなわち、「租税に関する教育その他知識の普及及び啓発のための活動」についての規定があります。

租税教育等事業は、次のことを目的としています。

  • 租税教育を通じて租税に関する意義や役割、機能、仕組み等の租税制度を知ること
  • 申告納税制度の理念や納税者の権利及び義務を理解すること
  • 社会の構成員としての正しい判断力と健全な納税者意識を育むこと

租税教育の現状

租税教育は、小・中学生、高校生、大学生、社会人まで幅広く対象にしています。

平成29年度には、全国の税理士会において、合計約12,000件の租税教室が実施されました。内訳は、小学校が最も多く約5,500件、中学校約3,800件、高校約2,000件、専門学校約360件、大学・短期大学と社会人がそれぞれ約130件ずつとなっています。

租税教育の講師になるには

租税教育の講師となるには、税理士登録後1年以上の実務経験が必要とされます。

また、全員「租税教育講師養成者研修」を受講する必要があり、初回登録時には登録研修、その後毎年更新研修を受講します。

それでは、小学校を例にとって、どのような授業が行われるか、ご紹介します。

租税教室授業のポイント

授業では、

  • (課税の)公平
  • (税は)みんなのため(のもの)
  • 国民主権と民主主義

といった点をポイントとします。

ライフイベントと税金

まず、人の一生と税金のかかわりを考えます。

例えば、子供でも支払う税金に「消費税」があります。

高校生になって、アルバイトをするようになり、お給料をもらうとかかる税金が「所得税」と「住民税」。

20歳になり、お酒を飲むようになると、お酒代と一緒に支払うのが「酒税」。

会社を設立したら、会社が支払うのは「法人税」。

家を買ったら「固定資産税」、車を買ったら「自動車税」。

最後に、財産を残して亡くなった場合、その財産を受け継ぐ人が支払うのが「相続税」。

といった具合です。

税金には、国税と地方税があること、そして、現在約50種類の税金があることを知ってもらいます。

税の集め方のゲーム

次に、所得の違う3人から、合計3,000の税を公平に集める方法を考えてもらいます。

  • Aさん…2,500
  • Bさん…500
  • Cさん…7,000

さて、どういう方法がいいと思いますか?

授業の様子

ゲームでは、自分がAさんだったら、Bさんだったら、Cさんだったら、という前提でグループに分かれて考えます。

例えば、

  1. 3人から1,000ずつ集める方法
  2. お金持ちのCさんにだけ3,000支払ってもらう方法
  3. 3人とも同じパーセンテージで支払ってもらう方法
  4. お金持ちのCさんは高い割合、お金のないBさんは低い割合で支払ってもらう方法

などが考えられるでしょう。

生徒たちは各々考えた方法を発表しますが、自分たちが全部払う、という太っ腹なCさんグループもあれば、みんなで1,000ずつ支払って、赤字になるBさんは借金しても仕方ない、という現実的なグループもあり、とてもおもしろいです。

大切なのは、生徒たちが考える方法の、どれか一つだけが正解であるとか、どれかは間違いということはない、ということです。

みんなで1,000ずつ支払うのは、平等だけど、公平ではないかもしれない。

そういう切り口から、公平とは何かを考えてもらいます。

現実の税制

実は、上のすべての方法に当てはまる税金があります。

順に例を挙げると、

  1. みんなが同じ金額を支払うのは消費税
  2. お金持ち(特定の資産を持っている人)だけが支払うのは固定資産税自動車税
  3. みんなが同じ率で支払うのは(特例はありますが)法人税
  4. お金持ちはたくさんお金のない人は少し支払うのは所得税

です。

さまざまな方法を組み合わせることにより、公平に税金を集められるようにと、50種類もの税金がある、ということを知ってもらいます。

国民主権

税金の集め方はすべて法律に定められています。

法律に基づき集められた税金は、予算案に基づき使われます。

では、法律を承認するのは、予算案を承認するのは誰か?

国民主権に基づき、選挙で選ばれた国会議員により組織される国会です。これが、民主主義という仕組みです。

民主主義は、みんなのことを考えること。

どういう税金の集め方をすればよいか、どういう税金の使い方をすれば、みんなのためになるかを、一人一人が考えることが大切です、と終わります。

自分たちが決めている

自分と国会とはかけ離れた存在のように思いますが、本質を抽出すると、私たちは、自分たちが支払う税金の集め方や使い道を、自分たちで決めるシステムの中で生きているのです。

「お上の決めたこと」と思いがちですが、消費税増税も、配偶者控除制度の変更も、制度的には、みんな、自分たちが決めたこと、なのです。

これはとても重要なことだと思います。

一人が行動するだけではたしかに何も動かない。

けれども、こういう教育を子供の頃に受ける人たちが増え、そのうちの何人かが行動し、その輪が広がっていけば。

何かを動かすことができるかもしれません。

租税教育の講師登録をしたことで、税の本質や、税と民主主義のかかわりを深く考えるようになりました。

この思いを伝えられるように、租税教育の講師を続けていきたいと思います。

おわり。

追伸:国税庁のホームページに「税の学習コーナー」というコンテンツがあり、その「ビデオライブラリー」の中の「マリンとヤマト 不思議な日曜日」というビデオ(アニメ)があります。小学生向けのビデオですが、「税のない世界」が描かれていて、なかなか面白いです。誰しも税を払い、誰しも何かしらのために税の恩恵を受けていて、何かを擁護するわけではなく、それは人が社会で生きている以上、当たり前のことなのではないかと思います。
国税庁のホームページのトップページにリンクします
上部のメニュー「税の情報・手続・用紙」のドロップダウンメニュー→「キッズページ(税の学習コーナー)」→ビデオライブラリーの「ビデオ(アニメ)」からたどり着けます(2018年11月19日現在)。

今日の花

ユーカリ ニッコリー(フトモモ科、原産地:オーストラリア)

細い葉のユーカリです。茎がとてもしなやかで、ふわふわとした空気感が出ます。ユーカリ独特の香りもあり、アレンジしていてとても爽やかな気持ちになりました。