3月決算会社の決算発表の際、「自社株買い」の実施を発表する会社が目立ったように思います。
自社株買いとは何か、メリット、会計処理について取り上げます。
自社株買いとは
自社株買いとは、文字通り、株式会社が、自社=自分の会社の株式を買い取ることで、会社法には「株式会社による自己の株式の取得」として定めがあります。
株式会社は株式を発行し、広く一般から会社運営のための資金を募ります。株式の対価として払い込まれる金銭は、通常、資本金となり、会社の基本的財産となります。
それを会社が買い取るということは、会社が株主からわざわざ集めた資金を返却するという矛盾した行為であり、度が過ぎれば、会社の基本的財産が損なわれるおそれがあります。
また、株式は、同じ種類であれば1株の権利は均一であり、すべての株主は、株式の内容・持株数に応じて平等に取り扱われるという「株主平等の原則」が適用されます。
仮に、一部の株主だけがこっそり会社から株式を買い取ってもらい、払い込んだ資金を取り戻すことができたら、「株主平等の原則」に反します。
このため、会社法において、
- 株式会社が自己株式を取得できる場合を制限
- 会社の基本的財産が損なわれないように、上限金額(財源)を制限
- 株主間で不公平が生じないように、手続の詳細を規定
等の配慮がなされています。
上場企業が自社株買いを行う際は、通常、株主総会決議または取締役会決議に基づき、市場から株式を買い取ります。
自社株買いのメリット
まず、市場から自社株を買い取る場合、当然、買い取る際に金銭を支払う必要があり、自社株買いをしようとする会社には、そのための資金が手元にたっぷりある、というのが前提です。
それを踏まえ、自社株買いを行うメリットは、主に次の2つです。
- 資本効率の向上
- 株主還元
①資本効率の向上
資本効率とは、会社が調達した資本の運用効率を表す指標で、主なものに、
- ROA(総資産利益率)
- ROE(自己資本利益率)
がありますが、自社株買いにより向上するのは、ROEです。
ROE(Return On Equity:自己資本利益率)
ROE=当期純利益÷自己資本×100(%)
ROEは、会社が自己資本(株主からの出資)を使ってどの程度の利益を上げているかを測るものであり、自己資本に対して多くの利益を上げることができる方が良い(値が大きい方が良い)、とされます。
自社株買いにより、会社の自己資本にはこのような変化が起こります。
当期純利益の金額が同じであれば、自己資本が小さくなる分、ROEは大きくなります。
②株主還元
株主に対して、利益をお返しする(還元する)ことです。株主が出資した資金を元手に会社が稼いだ利益の一部を、株主に分配する、という方がわかりやすいでしょうか。
株式会社の場合、株主は、配当または売却益により、株式から利益(投資に対するリターン)を得ますが、このうち配当は、会社が得た利益の一部を金銭で株主にお返しするものであり、株主に対する利益の還元です。
自社株買いは、会社が余剰資金を使って株主から株式を買い取り、株主がお金を受けとるという点で、配当と同様の効果があります。
株式を手放した株主にはお金が残る一方、株式を保有し続ける株主には、1株当たりの価値が上がる、というメリットがあります。
自社株買いをすると、市場に出回る株式の数は減ります。当期純利益の金額が同じであれば、株式数が減る分、1株当たりの利益が大きくなり、価値が上がる、ということです。
会計処理
買い取った自社株は「自己株式」という名称で、純資産の部のマイナスとして取り扱われます。市場から買い取る場合、金額は、買い取った時の株価です。10万円で買い取ったとすると、次の通りです。
借方 | 貸方 | ||
自己株式 | 100,000 | 預金 | 100,000 |
おわりに
自社株買いは、上場企業でなければできないということはなく、非公開の株式会社でも行われることはあります。ただ、非公開の株式会社の株式には市場価格がないため、買い取り価格の決め方には注意する必要があります。
また、会計上は比較的簡単な仕訳ですが、税務処理には注意すべき点があります。
これらのテーマもいずれ取り上げてみたいと思います。
今日の花
カンパニュラ(キキョウ科、原産地:ヨーロッパ)
フウリンソウとも呼ばれます。文字通り、ベルのような形をした花が1本の茎にいくつもつきます。白のほか、紫やピンクもあります。花があちこちを向いていて数多くついているので、いけばなだと「どれを切る?」というのが悩みです。かわいいから切りたくない、というのはダメで、難しいです。
編集後記
東京ヤクルトスワローズが14連敗中です。セ・リーグではいちばん好きな球団なので、どこまで続くのか、ここ数日心配しています。自分としては、連敗前に1位、2位にいたことの方ができ過ぎだったのでは?と思うのですが、さすがにここまで結果が出ない状態が続くと、選手も関係者もさぞしんどいことでしょう。球場行くの嫌だろうな…。今日からハマスタなので、少し気分が変わればいいのですが。引き分けをはさまない連敗記録の保持チームはヤクルトといういささかの不安材料はありますが、何十連敗もしたチームはないので、いつかは勝てる!と信じて、見守りたいと思います。
1日1新
OAZO屋上庭園(屋上緑化の一環で作られたもののようですが、植栽の多くは枯れていて、庭園とは言えないだろうというくらい寂れていました…。)
「1日1新」について詳しくはこちら。