建物を壊すといっても、建替とか改装とかのことです。

事業所得の場合

個人事業で、ご自宅の一部を店舗にしたり、ビルやマンションの一室を借りて店舗にしたりすることがあります。

これを取り壊したときにかかる費用はどうなるでしょうか?

  1. 資産の残存価額(未償却残高)→必要経費
  2. 資産の残存価額以外にかかった費用(取り壊し費用、原状回復費用など)→必要経費

年の途中で取り壊した場合の①については、(ア)期首の未償却残高、(イ)取り壊しまで減価償却を加味した未償却残高、のいずれでもかまいません。

不動産所得の場合

賃貸しているマンション・アパートを、老朽化等により建て替えた場合はどうなるでしょうか?

事業的規模かどうか?

不動産所得の場合、建物の貸し付けが「事業的規模」であるかどうかで処理が分かれます。事業的規模とは次のいずれかに当てはまる場合をいいます。

  • アパート等の独立した貸し室数がおおむね10部屋以上
  • 独立した家屋の貸家数がおおむね5棟以上

事業的規模の場合

  1. 資産の残存価額(未償却残高)→全額必要経費
  2. 資産の残存価額以外にかかった費用(取り壊し費用など)→全額必要経費

事業的規模でない場合

  1. 資産の残存価額(未償却残高)→不動産所得の金額を限度に必要経費
  2. 資産の残存価額以外にかかった費用(取り壊し費用など)→全額必要経費

事業的規模であるかどうかの違い

事業的規模であるかどうかの違いは①に出ます。

事業的規模であれば、資産の残存価額を全額必要経費にできますので、その年の不動産所得は赤字(マイナス)になることもありえます。そうすると、他の一定の所得(事業所得、給与所得など)の黒字と相殺したり、相殺しきれない分は翌年に繰り越すことができます。

事業的規模でない場合は、不動産所得の金額が限度になりますので、不動産所得は0円より小さくなることはなく、不動産所得は決して赤字にならないことになります。

家事関連費の問題

不動産の貸付業を廃業するために建物を取り壊すこともあります。この場合はどうでしょうか?事業的規模であったとします。

  1. 資産の残存価額(未償却残高)→全額必要経費
  2. 資産の残存価額以外にかかった費用(取り壊し費用など)→必要経費にならない場合もある

取り壊し作業費については、業務上必要でないと認められる場合には、必要経費になりません。このため、例えば、

  • 貸付業を廃業してから取り壊すまでに、自分の居住用に使っていた
  • 貸付業を廃業してから取り壊すまでに、長い間放置していた

ような場合には、必要経費となりません。

あくまで、貸付業を清算・整理するために必要で取り壊したという客観的な事実が必要です。事業の清算・整理であれば、通常、廃業から速やかに行われるものですので、取り壊すまでの期間があまり長くてはいけません。

自分が住んでいた建物を建て替えて賃貸用にする場合

自分が住んでいた建物の買った時の値段がわかれば、建て替えまでの未償却残高を計算することはできます。また、建物を建て替えるために、既存の建物を取り壊す費用もかかります。

  1. 資産の残存価額(未償却残高)→必要経費にも、新しい建物の取得価額にもならない
  2. 資産の残存価額以外にかかった費用(取り壊し費用など)→必要経費にも、新しい建物の取得価額にもならない

自分が住んでいる建物を壊すことは、目的にかかわらず、それ自体は自分のプライベートの資産を好き勝手に処分しているだけであり、不動産賃貸業とは関係ないこととみなされます。

このため、既存の建物の未償却残高や取り壊し費用は不動産所得の必要経費にならず、新しい建物の取得価額にもなりません(新しい建物の取得価額に含まれたら、一時に経費にならないだけで、毎年少しずつ経費になってしまいますので)。

おわりに

法人であれば、何の疑問もなく、資産の残存価額も取り壊し費用も「除却損」ですが、個人事業のうち不動産賃貸業の場合は、事業的規模かどうかで会計処理がまったく異なりますので、注意しましょう。

今日の花

チューリップ(ユリ科、原産地:中央アジア・北アフリカ)

八重咲のチューリップです。だいぶ花が開ききった時期の写真です。チューリップの花は夜閉じて朝開くのですが、徐々に夜になっても閉じなくなって、花びらが透明な蝋のようになっていきます。退廃の美というか、散る本当の間際まで美しいと思える、数少ない花です(主観ですが)。