「法定調書」制度をご存じですか?確定申告や届出より影が薄いかもしれませんが、意外とあなどれないヤツです。

「法定調書」とは

「法定調書」とは、「所得税法」、「相続税法」、「租税特別措置法」、「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」の規定により税務署に提出することが義務づけられている資料をいいます。

平成30年10月16日現在、法定調書の種類は、なんと、60種類もあります。

比較的なじみがありそうなものには、

  • 給与所得の源泉徴収票 … 給与の支払いをする人が、一定の金額を超える給与を支払った相手(役員、従業員)について提出
  • 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書 … 外交員報酬、税理士報酬などの支払いをする人が、一定の金額を超える報酬等を支払った相手についての情報を報告
  • 不動産の使用料等の支払調書 … 土地・建物等の賃借料等を支払う会社(不動産の借主)が、一定の金額を超える賃借料等を支払った相手についての情報を報告

などがあります。

これらの書類に共通するのは、支払った側が誰にいくら支払ったかを税務署に報告する、ということです。

書類には、支払った相手のマイナンバーを記載しなければなりません。

報酬や賃借料を受け取った側は、通常、自分の収入について確定申告をします。確定申告書には、マイナンバーの記載が義務づけられています。

ということは。

マイナンバーで紐付けることにより、支払った側からの報告と受け取った側からの申告とが一致しているかどうかを確かめることができます(実際、どこまで確認しているかはわかりませんが)。

報酬等を受け取った側で売上の申告漏れがあれば、これでばれる可能性があるということです。

実はいろいろ報告されてる

法定調書には、証券会社・保険会社・銀行等が提出するものが多くあります。

例えば、

  • 株式等の譲渡の対価等の支払調書 … 日本国内で株式等の購入代金の支払いをする法人、証券会社又は銀行が、購入相手、銘柄、金額等についての情報を報告
  • 生命保険金・共済金受取人別支払調書 … 生命保険会社等が、保険金の受取人、契約者、被保険者、保険金額、払込済みの保険料等についての情報を報告
  • 特定口座年間取引報告書 … 証券会社が株の売買や配当金について税金を計算して報告してくれるあの書類が(関連投稿:株を売った時の税金のこと)、証券会社を通じて税務署にも提出されます
  • 国外送金等調書 …  銀行等が、国内から海外への送金、海外から国内への送金について、送金者、受取人、口座種類、口座番号、金額等についての情報を報告

などです。

このように、株を売ったり、保険金を受け取ったりすると、その内容は証券会社等から税務署に報告されます。

書類には、株の購入代金を支払った相手、保険金の受取人等、書類がターゲットとしている人のマイナンバーを記載しなければなりません。

株を売ったり、保険金を受け取ったりしたら、確定申告しなければなりませんが、確定申告書には、マイナンバーの記載が義務づけられています。

もう、同じ流れですね。

株を売ったもうけや保険金収入等について申告漏れがあれば、マイナンバーで紐付けることにより、やっぱりばれる可能性があります。

公平の確保?

初めて法定調書制度を知ったとき、行った株の取引や、受け取った保険金が国に報告されているというのは、監視されているようでこわいな、と思いました。

しかし、見方を変えれば、公平の確保、とも考えられます。

もし、自分の申告だけに依拠していたら、真面目に申告する人とそうでない人とで、税金を納める金額に差が出てしまうでしょう。

取引を網羅的に報告させることにより、牽制、監視し、適正な申告を促すことで、公平の確保につながっているのかもしれません。

適正に納税すればこわくない

ばれる、と連発するのは、税理士としてはよくないですね。適正に納税すれば、何もこわいことはないのです。

それにしても、おそらく多くの方(私も含め)が抱いている、納税に対する渋い思いはどこから来るのか。

この夏、災害に遭われた地方では、多くの募金がふるさと納税を通じて集まったそうです。このように、自分の納めたお金が誰かの役に立つことが具体的に目に見えれば、惜しいとは思わないのでしょう。

自分の納めた税金はどこへ行くのか。この国の大きな財政でそれを考えるのは難しいですが、考えることをやめてしまっては、「国にお金を取られている」という感覚で税金を納め続け、お金の行く先はなおさらわからなくなってしまうような気がします。税に携わる者として、きちんと考えなければいけないと思います。

地味だけどあなどれない存在である「法定調書」から、なぜか、税金の行く末に思いを馳せてしまいました。

おわり。

今日の花

ピンクッション(ヤマモガシ科、原産地:南アフリカ)

名前のとおり針山のようです。針のような部分は花柱(めしべ)で、その根元に見える小さな筒状の部分が花です。太陽のようなオレンジの花から、元気をもらいました。