「(クライアントが出す)数字にプライドがない」
とあるクライアントで、監査法人時代の後輩が言った言葉です。
数字を作る(決算書や申告書を作る)側に回った今、自分に向かって問いかける言葉でもあります。
「この数字に、私のプライドはあるか?」
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会社というものは、経理のような間接部門は人数を抑えるものですし、経理担当者が会計に精通した人ばかりであるとも限りません。
監査は会社が作成した数字(財務諸表)をチェックします。間違いがあったら、その旨を伝えて、会社に修正してもらいます。
理想としては、会社内部でチェック機能を発揮して、監査人に提出するものは、修正が必要な箇所がない(あるいはごく少ない)ものであることです。
しかし、経理担当者が多忙、会計にあまり詳しくない等の理由で、修正が必要な箇所がたくさんあるものが提出されることもあります。
印刷してチェックも何もせずに持ってきているのでは?と思うようなことも。
忙しいのはわかるけど少しはチェックしてよと思いつつも、私は半ば諦めつつありました。
そんなクライアントを一緒に担当していた後輩がぽつりとつぶやいたのが、冒頭の言葉でした。
「(クライアントが出す)数字にプライドがない」
財務諸表は会社の主張です。監査人と会社とのあるべき関係を踏まえれば、会社は自律的に財務諸表を作るべきであり、それを構成する数字に自信を持つべきです。監査人と闘え、とまでは言わないものの、それを辞さないくらいでいいのです。
「間違っていたら教えてもらえばいいからとりあえず出しとこう」では、たしかに、会社としてのプライドはないと言えます。
数字を巡る監査人と会社との関係の本質を突いた言葉に、はっとさせられました。
それからずっと、その言葉は、監査人として数字を見るときに頭の片隅にありましたし、税理士(補助)として数字(決算書や申告書)を作る立場になってからは、自分に問いかけるものとして頭の中にあります。
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今日は確定申告の申告期限です。
自分のお客様の申告書、自分の申告書、相談業務で対応した納税者の方の申告書。全部合わせると、数十件の申告書を作成しました。
自分の申告書はスピード重視でしたし、相談業務の申告書についても、限られた時間・情報という制約から妥協せざるを得なかったところがあることは否めず、後から振り返ると「もっと良くできたのでは」という少し苦い思いを、残念ながら今年も感じています。
どんな状況で作るどんな数字であっても、自分が作るものには一切後悔したくない。
「この数字に、私のプライドはあるか?」
問いかけ続けることで、自分の力を高めていけたらと思います。
今日の花
ラナンキュラス(キンポウゲ科、原産地:地中海地方東部・中近東)
「好きな花は?」と聞かれたら真っ先に挙がる花です。薄い花びらが幾重にも重なった花の姿が美しく、その花の丸いフォルムと細くまっすぐな茎とが少しアンバランスなのも良さだと思います。ピンク、黄色、オレンジ、緑など様々な色がありますが、今日のテーマには白がいいと、これを選びました。