開業して時間ができたら、絶対にやりたいと思っていたことがありました。

コンプレックス

子供の頃から爪を噛む癖があり、手の爪が深爪でした。

監査法人に就職すると、名刺交換はもちろん、資料を指差しながらクライアントと話をすることも多く、自分の爪が恥ずかしいと思うようになりました。

自分で直そうとしたこともありましたが、2~3ヶ月がんばっても目に見える改善はなく、結局元に戻る繰り返しで、爪そのものの見た目の悪さと、直そうとしても挫折を繰り返す自分の意思の弱さの両方がイヤでたまりませんでした。

監査法人を辞めて勤めた税理士事務所は、所長が女性、職員も大半が女性で、女性らしいおしゃれはむしろ歓迎。所長自らネイルはとても綺麗にしておられ、職員もネイルは自由で、ますますうらやましさと情けなさがつのりました。

深爪矯正

当時、インターネットで検索して、「深爪矯正」というメニューを設けているネイルサロンを見つけましたが、価格は一般的なネイルサロンより高めで、土日は受け付けていなかったため、踏ん切りがつきませんでした。

しかし、開業したら、お客様の前に出す手は商売道具。自分の気持ちとしても、見るのもイヤな手とは一緒に仕事をしたくありませんでした。

平日に時間が取れるようになったこともあり、思い切ってこの「深爪矯正」に通い始めました。

やってもらうのは、爪の周囲をきれいにして形を整え、透明のジェルネイルを塗ってもらうことです。これだけ見れば普通のネイルサロンと変わりませんが、深爪になっている爪は長さが短い上に薄くて弱く、変形していたりもするため、技術が必要なようです。

なぜこれで改善するかというと、①爪の周囲を適切な方法できれいにすることによって爪が伸びやすくなる、②ジェルネイルはマニキュアより固いため、塗ると爪を保護でき、弱い爪でも伸ばしやすくなる、③固いため爪の形が固定され、そのまま伸びるので爪の形が整いやすい、とのことでした(おそらく個人差があります)。

自分の癖については、それなりのお金をかけてピカピカにしている爪を見ればこれを噛もうとは思わないだろうと予想しており、それはそのとおりでした。

日常生活を変える

爪をきれいに伸ばすために、いくつか気をつけなければならないことがありました。

指先に刺激を与えない、爪だけに力が加わるような動作(プルトップを爪で開けるなど)は避ける、食器洗いや掃除はゴム手袋必須、とにかく保湿(1日10回以上ネイルオイルを塗る)、などなど。

これを踏まえ、ボタンは指で押さず指の腹または関節で押す、時計のバックルを爪で外さない、ゴム手袋を使う、デスクに保湿用のオイルを常備、などなど、生活習慣を変えました。

注意事項を守ってサロンに通うと、かつていくら自分でがんばってもだめだったのに、2ヶ月もすると、指の先端よりも下にあった爪の生え際が明らかに上がってきて形も整ってきました。

逆に言えば、ここまでしないと短くなり過ぎた爪はきれいに伸びないということなのかもしれず、「そりゃいくら自分でがんばってもだめだったろうよ」と思ったものです。

約10ヶ月で深爪は直りました。10ヶ月は長い?短い?私にとっては、深爪だった約40年と比べたら、10ヶ月は短く感じます。

継続できた理由

「商売道具」という強い意識

自分ひとりで仕事をする以上、自分がいかに見られるかによって、自分が出会う仕事や、お客様・仕事相手との関係も変わってきます。そう思えば、今までとは真剣さが違いました。

早期に効果を実感

2ヶ月ほどで目に見えて効果が現れました。やっていることは間違っていない、と思えたことで、継続するモチベーションが生まれました。

ネイリストさんの励まし

励ましというか、保湿をさぼると必ず「乾燥してますね」などと言われ、それが効きました。言い訳しつつも、その後は気をつけましたから。

お客さんにあえて厳しいことは言いたくないでしょうが、お客さんのためを思ってということの他に、注意しないで「効果が出ない」と思われてはサロンにとって好ましくない、というのもあるかもしれないと思いました。

学んだこと

知識と経験に裏付けされた言葉の力

ネイリストさんに「爪は絶対伸びてきれいな形になります」と言われました。半信半疑の私に、ネイリストさんは、上に書いたような理由をきちんと説明してくれました。ホームページでBefore-Afterの写真も見ていましたので、それと併せて、ネイリストさんの「絶対」を信じようという気持ちになれました。

どんな言葉でも、裏付けがなければ相手に信じてもらえません。自分の言葉が、お客様に信じてもらえる、力のある言葉になるよう、経験と実績を積み、自分を磨いていかないといけないな、と思いました。

効果を実感させる重要性

継続できた理由にも挙げましたが、早期に効果を実感できると、やっていることに自信を持てるし、アドバイスしてくれる人のことをより信じられるようになります。

お客様へのアドバイスでも、大きなことをいきなり始めるのでなく、小さな変化を実感できる積み重ねの方が効果的なのかな、と思いました。

ニッチなニーズとその先の広がり

深爪のような少数派のニーズを掘り起こして焦点を当て、それに対応できる技術・ノウハウを持てば、ビジネスの強みになります。もちろん、その上に、お店の雰囲気作り、お客さんとの接し方など、様々な工夫は必要です。

深爪が直ってもそのまま通い続け、カラーのネイルをするようになるお客さんもいるでしょう。カラーのネイルをするネイルサロンの競争は激しいですが、その競争の中で最初からリピーターをつかめるという強みにもなります。

ビジネスになるニーズの見つけ方の一つの勉強になりました。

正しい努力

爪をきれいに伸ばすためには、ただ放っておくのではなく、日常生活の中で気をつけなければならないことがたくさんあり、いわば正しい努力をしてこその成果だったと思います。

迷って行き詰まったときは、専門家のアドバイスをもらって方向転換してみないといけないな、と思いました。

悩みに共感できる感性

人に深爪矯正の話をしてきれいになった爪を見せても、大体「ふーん」という反応。生きていれば爪は伸びてくるのが当たり前なので、爪が短いという悩みはわかりづらいのだと思います。

逆に、私から見たら「どうしてそんなこと?」と思うようなことを悩み、解決した、という話をしてくれる人がいたら。

その人がそれを克服するまでには、私の爪と同じように、葛藤、踏み出す勇気、努力などがあったであろうことを想像し、共感できる感性を持っていたいと思います。

おわり。

今日の花

テマリソウ(ナデシコ科、原産地:ヨーロッパ)

マリモのように緑でもふもふしています。もふもふは、花びら、おしべ、めしべが萼(がく)のように変化したものです。持ちが良く、最後、花だけ切って小さな器に浮かべてもかわいいです。