2021年分の確定申告をメドに、医療費控除の手続を自動化するシステムの構築が進められるとのことです(2019年4月17日付日本経済新聞)。
ざっくりいうと、
マイナンバーで保険診療情報を管理(マイナンバーカードを保険証として利用できるようにする)
↓
保険診療情報のシステムと国税庁のシステムを紐づけ
↓
国税庁のシステムでマイナンバーの認証を行うことで、医療費控除の計算を自動化
ということだそうです。
でも、医療費控除の対象って、これだけではないのですが…。
改めて、医療費控除の対象とは
医療費控除の対象となる費用の範囲は、次のとおりです(2019年4月18日現在)。
- 医師等による診療または治療費用…病院にかかったときの治療費・入院費
- 医薬品の購入…治療、療養のための医薬品購入費(医師からの処方薬、薬局で自分で購入するもの)
- 通院費用…病院までの電車賃、必要不可欠な場合のタクシー代
- 介護サービス…医療系サービス(訪問看護等)、ケアプランに基づき医療系サービスと併せて利用するサービス(訪問介護、入浴介護等)
医療費控除の申告方法
「医療費の明細書」に次の事項を記載し、確定申告書に添付して提出します。
- 「医療費通知」に関する事項…①医療費通知に記載された医療費の額、②①のうち対象年分中に実際に支払った額、③②のうち保険等で補填された額
- 「医療費通知」以外の明細…①医療を受けた人の氏名、②支払先の病院・薬局等の名称、③医療費の区分、④支払った医療費の額、⑤④のうち保険等で補填された額
「医療費通知」については保存不要、「医療費通知」以外の明細については5年間の領収書の保存が必要です。
「医療費通知」に記載されるもの
保険組合等から送付される「医療費通知」に記載されるのは、医療費控除の対象となる費用のうち、医師等による診療または治療費用、医師からの処方箋に基づき購入した医薬品の購入、医療系の介護サービス等です。
自分が支払ったのが3割負担分のもの、というイメージです。
医療費通知については、すでにいろいろなサイトで指摘されているところではありますが、
- 記載されている対象期間が1月~12月でない
- 届くのが遅い
- 金額が窓口で実際に支払う金額と異なる(公的制度で医療費の減免を受けている場合、窓口での端数処理)
といった留意点があります。
新しい仕組みができたところで…
期間の問題
冒頭で紹介した医療費控除手続の簡素化は、「医療費通知」の情報を利用するものです。大元のシステム同士が連携されるのであれば、「届くのが遅い」という問題は解消されるとしても、対象期間については、レセプト請求のサイクル(12月診療分であれば、翌1月10日までに請求、審査後、2月に決定・支払)の関係上、完全には解消されない可能性があります(医療費控除だけの申告は年明け早々に行う方もいらっしゃいますしね)。
この場合、システムに反映されていない分は自分で管理して、足し込む必要があります。
金額の問題
公的制度で医療費の減免を受けており、実際には窓口で支払う金額は0円なのに、医療費通知には3割負担の金額が記載される場合があります。
この場合、減免を受けた金額を自分で差し引かないと、厳密にいえば、
医療費控除の金額が過大
↓
申告税額が過少
↓
過少申告加算税や延滞税のペナルティを受ける
という可能性があります。
結局、それは自己責任で管理しなければなりません。
他の医療費
薬局で購入した医薬品、交通費、医療系サービスと併せて受ける介護サービス等については、当然、医療費通知には記載されませんので、自分で管理して、足し込む必要があります。
◆
結局、現状とあまり変わらないのではないでしょうか?
「今まで忙しくて医療費控除の申告なんてまったくできなかったよ」という方にはプラスになるかもしれませんが、
何とかしてマイナンバーカードを作らせて持たせたいんだろうなあ
とか、
ドラッグストアで買った薬なんかをちまちま貯めて医療費控除申告するなよ
とか…。
そんな意図の方を、個人的には強く感じます。
おわりに
確定申告の税務相談を受けていると、「医療費控除の対象になるもの=病院や処方箋の薬に支払った金額だけ」という認識が、まだまだ多いなあ、と感じました。
それほど大量に医薬品をドラッグストアで購入することもないのでしょうが、今は薬も高いですから、風邪薬、痛み止め、花粉症薬などを年に数回買えば、1万円くらいにはなってしまいます。同一生計のご家族の分を合わせたら、意外といい金額になってしまうかもしれません。
日本が申告納税制度である以上、税の仕組みを知って、できるだけ(もちろん正当に)税を減らすことや、税金を正しく計算することは、やはり自分の力でしかできません。
自動化が何でもいいわけじゃない、自分で考えるのが大事、という、当たり前ですが、今日はそんな話でした。
今日の花
ガーベラ「ブラッドレイ」(キク科、原産地:南アフリカ)
4月16日のガーベラ「ブラックパール」と同じく赤系のガーベラですが、こちらの方がクリアな赤色に近く、周辺の花びらが大きめで、中心だけが密になっています。Mixセットをいくつか購入してきたわけですが、色や形が本当に様々で、見ていて飽きません。花瓶に入れる組み合わせを変えたりするとまた違った印象になり、楽しめます。