法人の生命保険契約は、契約の種類によって会計・税務処理が異なります。
生命保険契約の会計・税務処理のポイント
生命保険契約の会計・税務処理は、次のポイントによって違いが生じます。
- 満期到来時に保険金の支払いがあるかどうか
- 解約時に解約返戻金の支払いがある(ごく少額の場合を除く)かどうか
代表的な保険契約と会計・税務処理を見ていきましょう。
なお、会計・税務処理は、いずれも
- 契約者…法人
- 被保険者…代表者
- 保険金(死亡・生存)の受取人…法人
の場合を記載しています。
終身保険
特徴
- 保険期間の決まりがありません。
- 被保険者の死亡時に保険金が支払われます。
- 途中で解約する場合は、解約返戻金が支払われます。
会計・税務処理
会社は、保険料を支払うことにより、外部に積立金を留保していることになります。このため、支払保険料は資産計上します。
借方 | 貸方 | ||
保険積立金 | 10,000 | 預金 | 10,000 |
定期保険(長期のもの、後述する逓増定期保険を除く)
特徴
- 保険期間の決まりがあります。
- 被保険者の死亡時に保険金が支払われますが、保険期間が終了した時(満期到来時)には保険金の支払いはありません。
- 途中で解約する場合も、解約返戻金の支払いはないか、あってもごく少額です。
会計・税務処理
満期保険金や解約返戻金がないということで、支払った保険料に対応して役務を受領しているということになります。このため、支払保険料は、支払った期に費用(損金)計上します。
借方 | 貸方 | ||
保険料 | 10,000 | 預金 | 10,000 |
養老保険
特徴
- 保険期間の決まりがあります。
- 被保険者の死亡時に保険金が支払われるとともに、満期到来時にも保険金が支払われます。
- 途中で解約する場合は、解約返戻金が支払われます。
会計・税務処理
終身保険と同様、会社は、保険料を支払うことにより、外部に積立金を留保していることになります。このため、支払保険料は資産計上します。(終身保険と同じため仕訳省略)
逓増定期保険
特徴
- 保険期間の決まりがあります。
- 保険期間満了時の被保険者の年齢が45歳を超えるという条件があります。
- 保険期間の経過により保険金額が5倍までの範囲で増加します。
- 被保険者の死亡時に保険金が支払われますが、保険期間が終了した時(満期到来時)には保険金の支払いはありません。
- 途中で解約する場合、解約返戻金の支払いがあります。解約返戻金の金額は、解約時の保険期間によって異なります。満期保険金がないことから、保険期間が長くなるほど解約返戻金の額は小さくなります。
会計・税務処理
保険期間の経過に応じて保険金が増加するにもかかわらず、保険料が保険期間を通じて一定ということは、保険期間の初期においては、増加する保険金に対応する保険料の一部を前払いしていると考えます。
このため、保険期間の6割までは、支払保険料の一部を前払費用とし、6割経過後は、前払費用を順次取り崩していきます。
被保険者の満期時の年齢が45歳を超えるものの例
借方 | 貸方 | ||
長期前払費用 | 5,000 | 預金 | 10,000 |
保険料 | 5,000 |
何のために入るのか?
法人の節税というと保険が挙がります。
とはいえ、
- 資産計上になるものは節税効果はもちろんなし
- 全額費用になるものは節税効果はあるが、掛け捨て(ムダではないかどうか?)
- 1/2費用になるものは、キャッシュアウトの割には節税効果は少ない
契約するかしないかの論点は、節税ではないと考えます。
会社にとって必要かどうか、です。
会社の資産形成、社長に万一のことがあった時の備え、社長の退職金原資。
いずれの用途の資金が会社にとって最も重要・必要なのか?
社長に万一のことがあったときや、社長の退職金原資には、いくら必要なのか?
それを保険を使って備えるのがいいのか、他の手段がいいのか?
無理なく払える金額はいくらなのか?
矛盾を割り切る
自分に万一のことがあったときのことが不安。
税金は払いたくない。
保険料を払い続けられるか不安。
この3つをすべて丸く叶えることはできません。
保険を契約すれば、万一の備えができて、いくらか節税できますが、保険料を払い続けられるかどうか、将来のことはわかりません。
確実に払い続けられる保険料にすれば、万一の備えとなる保険金額も、節税効果も小さくなります。それくらいならしなくても同じ、と思うかどうか。
結局、どこかを割り切って、自分が必要と判断して納得できる選択肢を見つけるしかありません。
私の役目は?
私は選択肢を示すことしかしません。これがいいのでは?と思うものがあっても、「税理士が言ったから」と意思決定されるのは、お互いにとって良くないことと考えているので、1つを勧めることはしません。メリット・デメリットを平等に挙げて、考えていただくようにしています。
もっと背中を押した方がいいのかな?と悩むこともあります。
しかし、会社・事業は経営者のものです。意思決定するための材料はすべて出しますので、最後は自分で納得できる選択肢を見つけていただきたい、というスタンスでいます。
今日の花
フランネルフラワー(セリ科、原産地:オーストラリア)
布地でネルというものがありますが、まさにその質感です。花びらもガクも葉も茎もふんわり起毛しています。これは生の花ですが、ブログサイトのトップ画像に見える赤い花は、プリザーブド加工したもの(市販)です。トップ画像はリースの一部でして、アレンジメントを習い始めて初めてスクールの作品展に出したものです。それもあって、とても好きな花ですが、生の花をアレンジに使ったことはおそらく初めてなので、とてもうれしかったです。