会計では経費になるものでも、税金計算をするうえでは、経費として認められないことがあります。

今回は、法人税を計算する際の経費のルールについてご紹介したいと思います。

法人税の計算の基礎

法人税は、

課税所得×法人税率

で計算されます。

法人税率は、会社の規模と課税所得の金額によって、次のように決まっています(平成30年10月25日現在)。

法人の区分 税率
中小法人の年800万円以下の部分 15%
中小法人の年800万円超の部分 23.2%
中小法人以外の普通法人 23.2%

課税所得とは?

課税所得とは、税金がかかる(賦課される)対象となる所得(もうけ)のことです。

課税所得は、

益金-損金

で計算されます。

益金は、法人税法で「収益として扱う」と決められているもの、損金は、法人税法で「経費(費用)として扱う」と決められているものです。

とはいえ、会計とまったく違うルールになっているわけではなく、部分的に異なる部分がある、というイメージです。

損金とは?

「損金」は法人税法第22条で、次のように定義されています。

  1. 原価については収益に対応しているもの
  2. 販売費及び一般管理費等の費用については事業年度終了日までに債務が確定しているもの
  3. 損失(資本等取引(利益配当や減資など)を除く)
  4. 一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されているもの
  5. 別段の定めがある場合はそれに従っているもの

先程の図に番号を入れたものです。

②の一部と⑤が「損金不算入」という部分に当たります。飛び出した部分について、詳しく見ていきます。

債務が確定しているもの(販売費及び一般管理費等)

販売費及び一般管理費については、債務の確定を基準に判断します。

債務が確定しているかどうかは、以下の要件をすべて満たすかどうかで判定されます。

① 債務が成立していること

簡単に言うと、契約が成立していることです。

物品を発注して受諾された、継続的に電気の供給を受ける契約をしている、などです。

② 債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が生じていること

発注に基づき物品を受領した、契約に基づき電気の供給を受けた、など、契約の目的が果たされたということです。

③ 債務の額を合理的に算定することができること

対価が確定している、ということです。

これらすべてが、事業年度終了日までに完了していることが必要です。

契約に基づき権利関係が確定していることが要求されていますが、これは、不確実性や恣意性(意図的に金額を操作すること)を排除しようという趣旨です。

他方、会計では、必ずしも権利関係が確定していることは要求されず、将来に経費や損失が発生することが予想される事態がある時には、早めに経費や損失を計上し、株主等の利害関係者に知らせようとします。

このような相違があるため、会計では経費になるものの税金計算では損金にならない、というずれがあらわれます。

具体的には、引当金、減損損失(固定資産)、評価損(棚卸資産)などがあります。

引当金

引当金は、当期以前に原因があるなんらかの事象の結果、将来に経費が発生することが予想される場合に、将来発生する経費の総額のうち、当期以前に起因するものの残高であり、引当金繰入額は、当期分を経費として計上するものです。

あくまで将来の予測であり見積もりですので、契約が成立していたり金額が確定しているわけではなく、「債務が確定しているもの」という要件を満たさないため、損金になりません。

例えば、退職給付引当金、賞与引当金、貸倒引当金、以前ポイントについて取り上げた投稿(関連投稿:「ポイント使うとポイント5倍で誰が得する?(前編)」)の中で出てきた「ポイント引当金」などがあります。

退職給付引当金は、退職金を給与の一部を退職時にまとめて後払いするものと考え、退職時に支払う金額のうち、当期における労働の対価の後払い分を計算して経費として計上します。

ポイント引当金は、ポイントは利用されたときに経費となるため、まだ使われていないポイントのうち、将来使われるであろう金額を計算して経費として計上するものでした。

減損損失(固定資産)

減損損失は、店舗や工場等の経営・採算が悪化し、店舗や工場等の固定資産に投資した金額を回収することが見込めなくなった場合に、将来回収が見込める金額を予測し、それに応じて該当の固定資産の金額を減額して損失として計上するものです。

経営・採算の悪化は突然起こるものではないことから、会計上は早めに損失の発生を見込み、損失を計上します。

ただし、将来回収が見込める金額に基づき計算された損失は見積りですので、「債務が確定しているもの」という要件を満たさないため、損金になりません。

評価損(棚卸資産)

棚卸資産、いわゆる在庫、の評価損は、品質低下、陳腐化、売れ残り(滞留)などが原因で、当初設定した価格で販売することができなくなった場合に、販売できるであろう価格に応じて棚卸資産の金額を減額して損失として計上するものです。

これも、品質低下等で値下げしなければならないという状況は、販売する時よりも前にわかっていると考えられることから、早めに損失の発生を見込み、損失を計上します。

ただし、実際にいくらで売れるかは将来販売する時にならないとわからず、計算された評価損は見積りでしかないため、やはり「債務が確定しているもの」という要件を満たさないため、損金になりません。

別段の定めに従っていること

政策的な理由等で、経費にしない、または、経費にする、と法人税法で定めたものです。主な理由と損金にならない経費を対応させてみました。

利益操作の防止

政策的な理由で「経費にしない」と定められている経費はほぼすべて、利益操作の防止、すなわち、もうかって税金をたくさん払わなければならなそうだ、となったときにばんばん使って経費を増やすことはさせまい、という趣旨がありますが、中でもこの意図が強く出ているものに、

  • 役員報酬
  • 役員退職金(過大なもの)
  • 従業員の給与(過大なもの)

があります。

役員報酬は原則として損金にならず、1年間を通じて同じ金額である等の一定の条件を満たすものに限り損金になります。

役員に対する退職金や従業員に対する給料については、勤務の実態と比べてあまりにも高すぎる金額である場合に、高すぎる分の金額は損金になりません。

役員報酬についても、上記の条件を満たす場合であっても、あまりにも高すぎる金額である場合は、同様に、高すぎる分の金額は損金になりません。

公平性の確保

税制の一つの理念に、課税の公平、があります。所得の多少にかかわらず公平に税金を負担すべき、という考え方で、様々な税制に反映されています(現実に受ける感覚は異なるでしょうけれども)。

公平性の確保、が趣旨であるものに、

  • 減価償却費(法定耐用年数)

があります。

減価償却とは、固定資産を購入した代金を、その資産を使うことができると見込まれる年月(=耐用年数)にわたって、規則的に分割して経費に計上しようとする考え方です。

現実に固定資産を何年使えそうかという見込みは、固定資産の利用頻度や利用環境により異なるため、会計上は自分の会社にあった耐用年数を設定することができます。

ただし、税金計算でもそれを認めてしまうと、固定資産の利用状況により減価償却費の金額が変わり、その結果、税金の金額が変わるのは不公平であることなどから、法律で「こういう種類の固定資産は○年で経費にすること」という法定耐用年数が決められています。

このため、会社が決めた耐用年数に基づき計算した減価償却費が、法定耐用年数に基づき計算した減価償却費よりも多い場合は、多い分は計上した年度の損金になりません。

無駄遣いの抑制・税収の確保

  • 交際費
  • 寄附金

一定の金額を除き損金になりません。事業に直接関係しない無駄遣いを抑え、税金を確保しようとするのが主な趣旨です。

経費の性質や法人税計算の要請によるもの

  • 税金の納付が遅れた場合等のペナルティである延滞税、加算税
  • 法人税そのもの

これらは損金になりません。ペナルティの税金を損金にしてしまうと懲罰の効果が薄れますし、法人税を損金にすると法人税の金額により課税所得が変動してしまい不都合だからです。

まとめ

  • 法人税は、課税所得×法人税率により計算される
  • 課税所得は、益金-損金により計算される
  • 益金になるもの、損金になるものは、法人税法により決められている
  • 損金は、会計の経費と概ね一致するが、不確実性・恣意性の排除、利益操作の防止等の政策的な理由による決まりがあり、一致しないものがある

おわり。

今日の花

ディアボロ(バラ科、原産地:北アメリカ)

ディアボロはイタリア語で「悪魔」という意味。深い紫色は天然のものです。フラワーアレンジメントでは、枝や葉は脇役のことが多いですが、十分主役になれそうなインパクトがあります。