2019年10月1日から、消費税の軽減税率制度が実施されます。ここで導入される複数税率に対応するため、2023年10月1日から、適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されます。消費税が10%に引き上げられることはもちろんですが、2023年10月1日を考えると、さらに憂鬱になります。

インボイスとは?

ヨーロッパのインボイス制度

日本の消費税制度は、ヨーロッパのVAT(付加価値税)を手本として設計されたと言われています。

ヨーロッパのVATも日本の消費税も、1つの商品が最終消費者の手に渡るまでの過程にかかわる事業者が、自分が販売の際に付加した消費税から、商品製造のために仕入れた原材料や卸として販売するために仕入れた商品に付加されていた消費税を差し引き、残りの金額を国に納める、というのが基本的な仕組みです。

ヨーロッパでは、この各過程におけるVATの適正な納税を担保するため、インボイスが使われています。

インボイスとは、売り手の会社が買い手の会社に対して渡す請求書のことです。買い手の会社はインボイスを保存することが義務付けられ、インボイスに記載されたVATを、仕入れた商品に付加されていたVAT(仕入税額)として、自分が顧客に販売する際に付加したVATから差し引くことができます。

インボイスには、発行した年月日、売り手の会社(インボイスを発行した会社)のVAT登録番号(法人を特定するための番号)・住所氏名、買い手の会社の住所・氏名、販売した商品やサービスの内容、税抜金額、適用税率と消費税額などを記載します。

売り手の会社はVAT登録番号により特定されるため、仕入税額の控除にかかる反面調査が容易にできます。

なお、インボイスに記載されたVATを仕入税額として差し引く、というルールがあるため、免税事業者(消費税の納税を免除されている事業者)は、インボイスを発行したり、インボイスに税額を記載することができません。

日本における仕入税額控除(現行)

日本では、買い手が仕入税額を差し引くための要件は次の2点となっています。

  1. 帳簿に、購入取引の内容(年月日、取引の相手方の氏名、取引の内容、税込金額)を記載し保存すること
  2. 関連する請求書等を保存すること

ただし、ヨーロッパにおけるVAT登録番号のような制度は存在せず、免税事業者から仕入れた場合も仕入税額を差し引くことができます。

適格請求書等保存方式

適格請求書等保存方式が導入されると、上記の仕入税額を差し引くための要件の②について、適格請求書等の保存が必要となります。

適格請求書は、売り手が買い手に対し正確な適用税率や消費税額を伝えるための書類であり、次の事項が記載されている請求書等のことです。

  • 適格請求書発行事業者(=売り手)の氏名又は名称及び登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である場合はその旨)
  • 税率ごとに合計した対価の額(税抜きまたは税込み)及び適用税率
  • 消費税額等
  • 書類の交付を受ける事業者(=買い手)の氏名または名称

適格請求書は適格請求書発行事業者のみが発行できます。

適格請求書発行事業者になるためには、税務署に登録申請を行います。登録が完了すると、税務署から登録番号が通知され、インターネットにも公表されます。

適格請求書発行事業者の登録を受けるのは、課税事業者に限られます。

この、課税事業者に限られる、という点がポイントです。

課税事業者と免税事業者

課税事業者とは、消費税の納税義務がある事業者のことですが、日本の課税事業者には2種類あります。

  • 消費税法の規定に基づき、強制的に(自動的に)課税事業者となる場合(2期前の課税売上高が1,000万円を超える場合等)

設立から2年間(資本金の条件などあり)や、課税売上高の金額が消費税法の規定に満たない小規模な事業者は、消費税の納税が免除されており、これを免税事業者といいます。

  • 自ら選択して、自発的に(任意で)課税事業者となる場合

適格請求書発行事業者からの仕入しか仕入税額を差し引くことができなくなる、というのは、こんな感じです。

買い手としては、同じものを仕入れるのであれば、当然、適格請求書発行事業者から仕入れたいと思うでしょう。

売り手は、その買い手との取引を継続したければ、課税事業者となることを選択し、適格請求書発行事業者の登録を受けることを検討するでしょう。

これにより、国は、これまで納税を免除していた消費税を徴収することが可能になります。

この部分は平成26年の試算で3,500億円(5%推計)と言われており、課税事業者に転換する事業者が増えれば、この何割か(以上)は国に納められることになると考えられます。

免税事業者から課税事業者になる影響額

例えば、年商900万円(税抜:すべて課税売上と仮定)、経費が570万円(税抜:すべて課税仕入と仮定)の個人事業主を想定します。

所得税率は現行(平成27年分以後の所得税率)と同じ、消費税は10%とし、青色申告特別控除、基礎控除他の所得控除及び復興特別所得税は無視します。

免税事業者の場合

所得税の課税所得は税込み金額で計算します。

課税所得:900万円×(1+10%)ー570万円×(1+10%)=363万円

所得税額:363万円×20%ー427,500円=298,500円

手取り:363万円ー298,500円=3,331,500円

課税事業者の場合

所得税の課税所得は税抜き金額で計算します。

課税所得:900万円ー570万円=330万円

所得税額:330万円×10%-97,500円=232,500円

消費税は、簡便的に、預かった消費税から払った消費税を差し引いた金額とします。

消費税:900万円×10%-570万円×10%=33万円

手取り:363万円-所得税232,500円-消費税33万円=3,067,500円

課税事業者になると税抜金額で所得を計算しますので、所得税については課税所得が小さくなり、この例では税率も20%から10%に1段階下がっています。

にもかかわらず、消費税の納税の影響が大きく、手取りは免税と比べて3,331,500円-3,067,500円=264,000円減少します。

まあ、預り金ですからこれが本来あるべき姿なのですけど、かなり影響はあります。

おわりに

平成28年度の統計に基づき単純計算したところ、法人税申告を行った全法人数に対する消費税申告を行った法人数の割合は約70%、個人の場合は約25%となっています。

消費税申告を行っていない、法人約30%、個人約75%のうち、どの程度の事業者が、適格請求書等保存方式の導入を機に課税事業者に転換するかはわかりません。

自社または自分が最終消費者への売り手であれば、適格請求書等を発行する必要がありませんので、課税事業者に転換しなくとも事業への影響は少ないでしょう。例えば、町で商店を営むような中小企業・事業主であれば、課税事業者に転換する必要性は低いと思います。

他方、企業相手に仕事をしているような中小企業・フリーランス(私も含めて)であれば、課税事業者を選択する必要に迫られる可能性が高いと思います。

私も、遅くともこのタイミングで課税事業者にならざるを得ないと考えています。税理士報酬が仕入税額控除できないなんてね。

まずは、自社・自分の取引では課税事業者を選択する必要があるのかないのかを検討し、あるのであれば、どの程度消費税の納税が発生し、どの程度手取りが減るかを試算したうえで、サービスや価格などを見直していくことも必要になると思います。

おわり。

今日の花

バーゼリア(ブルニア科、原産地:南アフリカ)

見た目も香りも杉のようですが、種類は別物です。実がかわいらしく、クリスマスのリースなどに使われます。花屋さんにこういう実物が増えると、冬が近付いたと感じます。早すぎる・・・。