勤めている会社を退職して新たに会社を設立するとき、営業の過程で仕事を受注し、会社設立前に役務を提供することがありえます。

この役務にかかる売上と経費は、個人と法人のどちらのものになるのでしょうか。

空白期間の原則論

会社設立前ということは「法人」がまだ存在しないということですので、この売上と経費は個人に帰属するのが原則です。

この場合、次のような手続をすることとなります。

  • 個人事業主として「個人事業の開業届」を提出
  • 役務にかかる売上と経費から事業所得を計算する
  • 翌年の3月15日までに確定申告

空白期間の一般的処理(容認規定)

とはいえ、通常、会社を設立するには、定款作成、出資金の預け入れ、設立登記のための書類作成などの法的手続、事務所の備品の準備や名刺作成などの営業面での準備などが必要であり、時間がかかります。

この間、個人事業として開廃業の手続を行うこと煩雑であり、会社を設立しようとする起業意欲を損なうことにもなりかねません。

このため法人税法上、法人の設立期間中に設立中の法人について生じた損益は、設立期間が通常要する期間内である場合は、その損益も法人の損益とすることができる、という規定が設けられています。

「設立中の法人について生じた損益」とありますので、法人の設立を前提とした役務であることが必要で、例えば、法人に依頼したいが、設立を待っていると期日が間に合わない、といった事情などが考えられます。

「通常要する期間」というのがどの程度の期間なのかは明示されていませんが、通常1ヵ月程度といわれています。例えば、半年間の空白期間ができてしまって、その間に個人で仕事を請け負った、という場合には、その仕事にかかる売上と経費は個人に帰属すると考えた方がいいでしょう。

法人の設立日とは?

ところで、法人の設立日とは、法務局に設立登記の申請をした日です。

申請方法には、書面による申請と電子申請がありますが、いずれの方法も、土、日、祝日は受付が行われていません(2019年4月11日現在)。

「この日に設立したい!」と思っても、法務局側の事情でそれが叶わない場合もある、ということですね…。

法人成りの場合

個人事業主がその事業を引き継ぐ法人を設立する場合には、個人→法人の空白期間は生じません。

法人の設立日=個人事業の廃業日です。

書類上は「=」ですが、実務的には、法人の設立日以後の売上と経費は法人、設立日の前日までの売上と経費は個人、ということになります。

なお、「設立日の前日までの経費は個人」といっても、通常、法人の設立日前までに、法人のために、例えば、設立登記を依頼する司法書士の費用、会社印、会社名入りの新しい名刺やチラシの作成料などがかかりますので、それらは、法人の経費(開業費)とする必要があります。

逆に、締め日の関係から、法人の設立日以後にも、請求書の発行、入金、経費の支払いが発生しますが、個人事業にかかるものであれば、個人に帰属します。請求期間、契約名義などを確認して正確に区別する必要があります。

おわりに

個人→法人の空白期間があるとき、

  • 新たに会社を設立する場合 → 通常要する期間内であれば、法人設立期間中の損益は、設立後の法人の損益に含めることができる
  • 個人事業を引き継ぐ会社を設立する場合 → 法人から法人、前日まで個人(空白期間は生じない)、ただし、法人の開業費や締め後の請求に注意が必要

会社を設立するときの、個人と法人の分かれ目についてご紹介しました。

今日の花

リキュウバイ(バラ科、原産地:中国中部)

利久梅または利休梅と書きますが、茶人の千利休とは関係ないようです。買ってきたときには真ん丸の白い蕾がたくさんついていて、開くと真っ白で薄い花びらの花がたくさんついて、とても美しいです。いけばなでも使う花材ですが、私の腕では10年、20年早い。新しい花屋さんで一目ぼれして買ってきて、自分の知っている花型で無理やりいけました。いけばなだと枝先にほんの少し花を残すくらいなのですが、自分用なので花は多めに残して楽しみました。