海外から物を買ったときや海外へ物を売ったときの消費税はどのようになるのでしょうか。
消費税の基本
消費税が課税される取引を課税取引といいます。
課税取引とは、以下の4つの要件を満たす取引です。
- 国内取引であること
- 事業者が事業として行う取引であること
- 対価を得て行うこと
- 資産の譲渡、貸付及び役務の提供と、外国貨物の引取りであること
国内取引であること
日本国内で行われるということです。
ただし、国境を越えた役務の提供については、別の規定が設けられています(いわゆる、リバースチャージ)。
事業者が事業として行う取引であること
事業者とは、法人と、事業を行う個人をさし、事業として行うとは、取引を繰り返し、継続かつ独立して行うことをいいます。
対価を得て行う取引であること
販売や役務の提供に対して、対価(料金など)を受け取ることです。
資産の譲渡、貸付及び役務の提供と、外国貨物の引取りであること
資産の譲渡とは、簡単にいうと物を売ることです。
資産の貸付とは、他の人に物を使わせることで、使わせる権利を設定することも含みます。
役務の提供とは、サービスを提供することです。
外国貨物の引取りとは、保税地域から貨物を引き取ることです。
保税地域とは、外国からの届いた貨物を税関の監督下に置くための場所です。貨物の積卸し、運搬、加工、製造、展示などを行うことができます。
この、外国貨物の引取りに係る消費税が、輸入に係る消費税です。
引き取る人が事業者であるかは問われませんので、一般の消費者であっても消費税を支払う義務があります。
輸入に係る消費税
保税地域から輸入品を引き取る場合、原則として、次の手続をとります。
- 輸入(納税)申告を行う(品名、数量、金額等と関税や消費税の金額などを記載した輸入(納税)申告書を保税地域を所轄する税関長に提出)
- 輸入品を引き取る時までに関税ともに消費税を納付
消費税の計算方法
消費税(8%:2018年11月16日現在、以下同じ。)は、内国消費税(6.3%)と地方消費税(1.7%)に分かれています。
消費税の対象となる価格は、次の金額です。
CIF価格(運賃、保険料込価格)+消費税以外の個別消費税+関税
上記の価格(端数処理については省略)に、まず、6.3%を掛けて内国消費税を計算し(100円未満切り捨て)、これに17/63を掛けて地方消費税を計算します。
会計ソフトなどで記録をする場合は、通常日本で仕入等をする場合に支払う消費税とは別に記録しておきます。
輸出に係る消費税
海外に物を売ったり役務を提供する場合には、消費税が免除されます。
消費税は国内での消費活動に対して課す税であるため、外国で消費されるものには課税しない、という考え方に基づきます。
消費税がかからない、わけではなく、消費税がかかるけれども免除される、すなわち消費税0%の取引である、という違いは重要です。
例えば、消費税の納税義務者になるかどうかは、2期前の課税売上高の金額に基づき判定しますが、この課税売上高に輸出免税売上の金額は含まれます。
また、仕入税額控除の計算方法(納付すべき消費税の計算において、売上に係る消費税から仕入に係る消費税を差し引く際の計算方法)は、課税売上割合(すべての売上に占める課税売上の割合)により変わることがありますが、輸出免税売上は、分母にも分子(=課税売上)にも含まれることになります。
輸出免税の適用を受ける場合には、その取引が輸出取引であることを証明できる輸出許可書や契約書等を申告の際に添付する必要があります。
海外に役務を提供する場合
海外の会社や外国の人(以下、非居住者という。)に役務を提供する場合には、次のような取引には輸出免税が適用されません。
- 国内に存在する資産の運送や保管
- 国内での宿泊や飲食
- 上の2つに類似する、国内において直接便益を受けるもの
- サービスの提供を受ける非居住者の会社等の支店や出張所が、日本国内にある場合
国内において直接便益を受けるもの
「便益」。わかりづらい言葉ですね。
考え方として、判例では、次のような基準(すべてを満たすこと)が示されています。
- 非居住者に対して国内においてその役務が提供されること
- 非居住者が、提供される役務の便益を国内において直接享受するもの
- 役務の提供と便益の享受が国内において完結しているもの
サービスを提供した-サービスを受けた、という双方の行為が、日本国内で完結している場合には、海外でサービスが消費されることにはならないため、輸出免税が適用されない、ということのようです。
具体的な例としては、次のようなものがあります。
- 建物の建築請負
- 理容または美容
- 医療または療養
- 鉄道、バス等による旅客の運送
- 劇場、映画館等のにおける観劇等の役務の提供
- 国内間の電話、郵便
- 日本語学校における語学教育(非課税になる場合あり)
サービスの提供を受ける非居住者の会社等の支店や出張所が、日本国内にある場合
この場合、日本国内の支店や出張所を通して非居住者にサービスが提供されたとみなされ、日本国内でサービスが消費されたものとして、輸出免税が適用されません。
ただし、次の要件を2つとも満たす場合には、日本国内でサービスは消費されていないとして、輸出免税が適用されます。
- サービスの提供にあたって、非居住者と直接契約を交わしており、日本国内の支店や出張所が一切関わっていないこと
- 日本国内の支店や出張所の営む業務が、提供するサービスと同じであったり関連するものでないこと
おわりに
輸入に係る消費税については、申告して支払うものですので、会計処理を区分して行い、申告書上、仕入税額控除することを忘れなければよいと思います。
しかし、輸出免税については、海外との取引の態様が多様になるにつれ、適用の可否の判断が難しくなってきます。0%の課税だと思っていたものが実は8%の課税だったとなれば、インパクトは相当のものになります。
海外への売上=輸出免税、と単純に思い込むことなく、取引先が日本に支店等を持っていないかを十分確認したり、複雑な取引の場合は、税務署や税理士に相談することも必要です。
おわり。
今日の花
バラ(バラ科、原産地:ヨーロッパ・アジアの温帯)
「バラ」は色々な名前があるのでそれが知りたいですよね。。つい忘れてしまう。。花が開いてだいぶ終りに近い頃に撮影したものですが、その時なりの美しさがあります。