「美術鑑賞で創造性を磨く」
この1ヶ月、ブログを綴ることで枯渇しきった私は飛びつきました。
ブログつらし
平日毎日更新を決意して始めたブログでしたが、半月ほどで早くも壁にブチ当たりました。
メモはある程度の数あるものの、実際に書き始めてみると話がふくらまない、誰の何の役にも立ちそうにない、と、一向に進まない。
デスクに座りパソコンで書くことができなくなり、スマートフォンを持ってカフェに行き、ファミレスに行き、電車に乗り・・・。
何もひねり出すものがない、ほんとに空っぽ、という、今までに味わったことのない感覚を覚えながらも、明日は近づいてくる。
いかに自分が中身のない人間かを思い知らされています。
そんなときに目にしたのが、日本経済新聞の記事でした。
美術品に囲まれながら仕事をしてもらい、創造性を研ぎ澄ますことを目指した一風変わった貸しオフィスだ。広さ5畳ほどの和室を一室のみ備え、絵画を見ながら仕事ができる。
仕事の前などに、15分ほどスタッフと会話をしながら絵画を鑑賞するプログラムもある。「絵が何に見えますか」「竜巻のようにみえます」といったやりとりをしながら、感性を磨く。
(2018年10月30日日本経済新聞夕刊より)
アート+オフィス
アート+ビジネス
かぁ。
おもしろそうだし、ネタになるかも(邪心)。
すぐに予約を取って、行ってきました。
はたらける美術館
都営大江戸線西新宿五丁目駅から徒歩7分ほど。
ビルが立ち並ぶ大通りから小道へ入り、静かな住宅街の間を抜けたところにありました。
(以下、写真の撮影とブログへの掲載は快く許可いただきました。)
白を基調にしたシンプルな和室で、日本庭園を思わせる、水音や鳥の鳴き声のBGMが流れています。

室内の様子

床の間風の空間も
もちろん、スタッフの方と会話をしながら絵画を鑑賞するプログラム
ビジネスパーソン特化型対話型鑑賞「ARTforBIZ」
をお願いしました。
最初に、はたらける美術館のコンセプトを説明してくださいます。
対話型鑑賞を通して、
- 見い出す力を養う
- 自分の軸を持ち、変化を楽しむ
などなど、今の私にとって、大きくうなずけることばかりです。
「対話型鑑賞」とは、ニューヨークのMoMA美術館で子供向けに開発されたもので、グループで同じ美術作品を鑑賞し、感じることを自由に発言し共有しあうことで、想像力が養われ、自分の考えを言葉にしたり、他人とコミュニケーションする能力が高まる効果が得られる、という美術鑑賞法です。
元々の対話型鑑賞は子供向けで、日本のビジネスマンには合わない部分もあったため、それを改良・開発したのが「ARTforBIZ」ということでした。
「ARTforBIZ」を体験
3枚の絵の中から、いちばん気になったものからスタート。
「何に見えますか?」
から始まり、「◯◯に見える」と答えた◯◯はどんなものなのか、◯◯の周りに描かれているものは何に見えるか、などと深堀りしていきます。質問されるとどんどん言葉が出てきます。
最後に絵にタイトルをつけて終了。
その後、他の方が同じ絵を見て何に見えたかを教えてくれます。
自分と同じものもあれば、まったく異なるものもあり、視点が180度変わるような驚きもありました。
もう1点、こちらも。
同じように(とはいえ少し違ったアプローチで)、絵を見て感じたことを言葉にしていきます。今度はタイトルではなく、絵を一言で表現して終了し、その後、他の方の見方を教えてもらいました。
最後にまとめとして、1枚目の絵の本当のタイトルを教えてもらいました。
ここでは伏せておきますが、まるで想像もしなかったものでした。先にタイトルを聞いていたら、自分の発想は決して出てこなかったでしょう。
「ARTforBIZ」の効果はいかに?
今回、「ARTforBIZ」を体験して感じた効果は次の3つ、プラス1、です。
- 思考を言葉にする訓練になる
- 思考を柔軟にする訓練になる
- 自分の心理を分析できる
思考を言葉にする訓練になる
自分の普段の生活の中で、何かを見たり聞いたりして「いいな」と思うことがあっても、それはなぜか?などと掘り下げて考えることはありませんでした。
掘り下げて考え、人に説明するためには、自分の中に根拠が必要ですし、説明の過程で自分の矛盾に気づくこともあります。
自分の考えをきちんと言葉にできれば、自分の軸を持つことにつながります。
また、例えば「不便だな」と思ったことについて、
- なぜ「不便だな」と思ったのか?
- 自分にとってだけ不便なのか、他の人にとっても不便なのか?
- どういうポイントが一番不便だと思ったのか?
- どうなったら「いいな」と思えるのか?
などと掘り下げて考えていけば、ビジネスにつながる可能性もあると思います。
思考を柔軟にする訓練になる
他の方の意見は自分にはない見方であり、「なるほど」と思うことも多かったです。
一つの物事について、自分一人で複数の見方を探すことや、いろいろな人の考えを聞くことで、多面的な見方を得ることができます。
この時、自分の軸がきちんとあれば、単に他人の意見に流されることも、反発することもなくなります。思考が柔軟になり、自分のプラスにすることができます。
自分の心理を分析できる
思いつくまま感想を言葉にしたのですが、振り返ってみると、自分が今置かれている環境や感情が反映されていると思いました。
私は、1枚目の絵は洞窟の入り口に見えました。
洞窟の奥はどうなっているかわからず、危険かもしれないけれど、奥から何者かに手招きされているように感じていて、今まさに入ろうとしている、という情景を思い浮かべました。
2枚目の絵は山と下向きのマッチ棒に見えました。
マッチ棒は山を焼く火の象徴で、今まさに、箱の側面に擦り付けられようとしているところ。美しい山が危険と隣り合わせにある、という情景を思い浮かべました。
開業して毎日不安だけど、進まなければ始まらないし、先の見えない道を進み続けなければならない。いつすべてがなくなってしまうかわからないという危険(というかむしろ恐怖)を感じている。
・・・ぴったりですね。
そういう意味で、「今」の自分の心理を分析するのに役立ちました。
まあ、内心こわいけどとにかく前に進むしかないと思っている私に私がかけてあげられる言葉はやっぱり、「進め」しかありませんが。
プラス1
おまけの1つは、作業系の仕事がいかに脳をダメにするかを実感した、ということです。
「ARTforBIZ」が終わったあとは、脳が活性化していて、アイディア出しや考えごとには最適だろうな、と思いました。
「ARTforBIZ」の後はそのままスペースを使って仕事ができますので、いくつか仕事を持参したのですが、作業系の仕事をしたら、この脳の活性状態は瞬く間に消え去りそうでした。
ということは、そういう仕事ばかりしていたら、脳はどんどんダメになっていくんだな・・・。
作業系の仕事は効率化して可能な限り短時間で済ませ、より多くの時間を、読む、考える、書く時間に充てたい、と切実に思いました。
おわりに
展示の絵は1ヶ月に1度交換され、同じ月であっても、同じ人が利用する場合は交換してくれるそうです。
次にあのスペースを使うとしたら、
- 自分の行く方に迷って煮詰まって、自分の考えをまとめたいとき
- アートと一対一で向き合い、仕事を忘れてリフレッシュしたいとき
かな、と思います。
知的な刺激に満ちた、とても楽しい体験でした。
おわり。
今日の花
ガーベラ(キク科、原産地:南アフリカ)
そろそろ色違いが登場します。赤のガーベラです。ガーベラの真ん中の部分は、外側から内側に向かって咲いてきます。これはだいぶ咲き進んだものです。同じ花でも表情が変わります。