クレジット、Paypal、メルカリなどを利用すると、売上金が入金される際に手数料が差し引かれることがあります。

手数料を差し引いた手取りの金額で売上高を計上して、税理士から「ダメ」と言われたことはありませんか?

利益の金額は変わらないのに、と思いますよね。

今日は、手取りか手取りでないかの話です。

会計の原則〜総額主義

会計の話から入ると、収益も費用も、手取りでない金額(以下、「総額」といいます。)で計上するのが原則的なルールです。

これは、「企業会計原則」という、会計のいちばん根っことなる規則集の中で定められています。

「費用及び収益は、総額によって記載することを原則とし、費用の項目と収益の項目とを直接に相殺することによってその全部又は一部を損益計算書から除去してはならない。」
(出典:「企業会計原則」損益計算書原則一B)

例えば、売上にクレジットを利用しており、10,000円入金時に手数料が500円差し引かれる場合には、売上高10,000円、手数料500円をそれぞれ計上する必要があります(消費税は考慮しない)。

借方 貸方
売掛金 9,500 売上高 10,000
支払手数料 500

収益認識に関する会計基準〜純額計上する場合

2018年3月に公表され2021年4月1日以後開始する事業年度から強制適用となる「収益認識に関する会計基準」では、収益を手取り(以下、「純額」といいます。)で計上する場合が定められました。

主に、百貨店等の消化仕入(売れた商品だけを百貨店が卸業者やメーカーから買い取ること)や商社の仲介取引が想定されています。

収益を純額計上するかどうかに当たっては、取引が次のような要件を満たすかどうかを考慮します。

  1. 履行義務…商品等やサービスを顧客に提供するに当たって、企業が主たる責任を負っているか
  2. 在庫リスク…企業が在庫リスクを負っているか(例えば、顧客から返品を受けたときに自社のコストとなるのか、卸業者やメーカーに返品できるのか)
  3. 価格の決定権…価格の設定について企業が裁量を持っているか

百貨店が消化仕入を行う場合の会計処理を、「収益認識に関する会計基準」の適用の有無で比較すると、次のようになります。

販売価格10,000円、仕入価格8,000円とします(消費税は考慮しない)。

適用なし
借方 貸方
現金 10,000 売上高 10,000
仕入高 8,000 買掛金 8,000
適用あり
借方 貸方
現金 10,000 手数料収入 2,000
買掛金 8,000

仕入先の業者に対して卸値を支払うことに変わりはありませんので、買掛金は8,000円計上します。他方、売上10,000円と仕入8,000円との差額である2,000円を手数料収入として計上します。

法人税の取り扱い

法人税では、「収益認識に関する会計基準」を適用して収益を純額計上した場合でも、申告書で総額に戻すといった調整は必要ありません。

純額のままでよい、ということです。

消費税の取り扱い

消費税では、「収益認識に関する会計基準」を適用して収益を純額計上した場合には、消費税の課税対象となる課税売上高は総額とする必要があります。

先ほどの百貨店の例でいうと、消費税は顧客に対する売上高である10,000円に対してかかる、ということになります。

借方 貸方
現金 10,800 手数料収入 2,000
仮払消費税 640 仮受消費税 800
買掛金 8,640

仮受消費税は販売価格10,000円に対応する800円、仮払消費税は卸値8,000円に対応する640円となります。なんだか気持ち悪い仕訳に見えるのは私だけでしょうか。

消費税法には、

「課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額(以下略))とする。」(消費税法第28条)

という規定があります。

消化仕入の商品であっても、顧客が購入すれば、顧客が支払う代金は百貨店が受け取ります。

このため、顧客が支払う代金=対価として収受する金銭が「課税標準」となる課税売上高となります。

こうしないと、売上高の認識基準によって課税売上高の金額が異なることとなり不公平だから、ということでしょう。

後述しますが、課税売上高の金額が異なることにより課税の仕組みが変わるからです。

もっとも、純額部分を役務提供の対価である手数料として受領する、という契約であれば、手数料部分が課税売上高となります。私見ですが、掛率を一定にするなど実務的に可能であれば、徐々にこういう契約形態に変わっていくのではないかと思います。

手数料が差し引かれるケース

冒頭の例に戻って、売上代金から手数料が差し引かれるのは、総額・純額の問題ではなく、単に売上代金と手数料を相殺して、代金決済を簡便にしているにすぎません。

このような場合には、売上高と手数料を別々に計上するのですが、特に消費税については、課税売上高の金額によって課税の仕組みが変わってしまうので注意が必要です。

例えば、課税売上高が

  • 1,000万円超→課税事業者となる
  • 5,000万円超→簡易課税の選択ができなくなる
  • 5億円超→課税仕入等にかかる消費税の全額を控除できなくなる(課税売上に対応する部分のみを控除)

といった違いがあります。

おわりに

「利益の金額は変わらないのに」「消費税だってもう課税事業者だから関係ないし」と思っても、手数料を差し引いて売上高にしてしまうと、例えば前月や前年と売上高・経費を比較するとき、たまたまクレジット決済が多い月とそうでない月で、本来の増減とは異なる要因によって売上高に増減が発生してしまうことが起こりえますので、経営状態を正確に確認できなくなってしまいます。

多少面倒でも、売上は売上、経費は経費として計上しておきましょう。

今日の花

チューリップ(ユリ科、原産地:中央アジア・北アフリカ)

今日のチューリップはフリンジ咲きといって、花びらの先が糸状になっている(フリンジは、布の端が縫い止まっていなくて糸がふさふさ出ているもの)のが特徴です。オレンジのようなピンクのような少しくすんだ色合いがおしゃれな感じです。茎も細めなので、ちょっと気取った雰囲気になるように撮影したのですがどうでしょう?