現代においては、企業は予測しうる将来にわたって事業を継続することが想定されています。これを「継続企業の前提」といいます。この前提のもとで企業活動は行われており、社会や経済の仕組みも構築されています。

企業活動の成果を報告する財務諸表も継続企業の前提に基づき作成されます。
例えば、将来にわたって返済する長期借入金を計上したり、取得原価主義で固定資産や在庫を評価したりします。

他方、破産開始決定がなされた会社など、近い将来会社が消滅することがわかっており、継続企業を前提としない会社もあります。

このような会社は、理論的には、継続企業を前提とする財務諸表ではなく、すべての資産・負債を事業の清算を前提とした換価価値(処分価格)で評価した財務諸表を作成します。(現在は税務申告上も清算結了まで継続企業を前提とした決算書を作成することとされていますので、実務的にはどのような会社でも継続企業の前提に基づく財務諸表を作成しています。)

では、将来にわたって存続できるかどうかがあやしい会社の財務諸表はどうするのか?というところ出てくるのが「継続企業の前提に関する注記」です。

継続企業の前提に関する注記とは

継続企業の前提に関する注記とは、決算日において、次の2つの状況のいずれにもあてはまる時に財務諸表に記載する注記です。

  • 単独でまたは複合して継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在する
  • この事象または状況を解消し、または改善するための対応をしてもなお継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる

会社がつぶれそうな状況(次に例示します)があり、かつ、それを解決するための手立てを尽くしても、会社がつぶれそうな状況から脱しきれないとき、と言えるでしょうか。

先程、会社が将来にわたって継続するか否かで作成すべき財務諸表は(理論的には)異なると述べましたが、上の2つの状況に当てはまるというだけでは、会社が作成するのは継続企業の前提に基づく財務諸表です。このため、他の健全な会社と同じく将来にわたって存続すると誤解されないように、注意喚起をするものです。

注記を書くのは誰?

あくまで、財務諸表を作成するのは会社(経営者)ですので、注記を記載するのも会社(経営者)です。

ただし、注記の要否、注記が記載されている場合にそれが適切かつ明瞭に記載されているかを会計監査人は検討し、不十分であったり不適切と判断する場合は、監査意見を制限することがあります。

注記の内容

次の4項目について注記が必要です。

  1. 継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在する旨およびその内容
  2. 当該事象または状況を解消し、または改善するための対応策
  3. 継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる旨およびその理由
  4. 財務諸表は継続企業を前提として作成されており、当該重要な不確実性の影響を財務諸表に 反映していない旨

継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況の例

注記が必要とされるほど会社が危うい状況、の主な例を挙げます。これらは、単独でまたは複数が組み合わさって会社を危険な状況に追い込んでいるものです。一方で、このうちどれか1つがあるからといって、必ず継続企業の前提に重要な疑義があるということでもありません。

財務関係

  • 債務超過または流動負債が流動資産を超過している状態
  • 過去の財務諸表又は予測財務諸表におけるマイナスの営業キャッシュ・フロー
  • 主要な財務比率の著しい悪化、または売上高の著しい減少
  • 重要な営業損失
  • 借入金の契約条項の不履行

営業関係

  • 経営者による企業の清算または事業停止の計画
  • 主要な経営者の退任、または事業活動に不可欠な人材の流出
  • 主要な得意先、フランチャイズ、ライセンスもしくは仕入先、または重要な市場の喪失 ・ 労務問題に関する困難性

その他

  • 法令に基づく重要な事業の制約、例えば自己資本規制その他の法的要件への抵触
  • 巨額な損害賠償の履行の可能性
  • ブランド・イメージの著しい悪化

対応策

対応策としては、資産の売却、資金調達、債務免除などが考えられます。

ただ書けばよいものではなく、実現可能性が高いもの、実際に協議し合意に至っているものである必要があります。監査人は、会社が対応策として挙げる内容についての真偽、実現可能性、対応策を取ることにより会社の事業に及ぼす影響などを確認します。

上場廃止との関係

継続企業の前提に関する注記があるからといって、即、上場廃止になるわけではありません。

ただし、2期連続債務超過になったり、注記の原因となった業績悪化あるいは注記がついたことそのものにより株価が下がり、株式の流通時価総額が5億円未満になったりすることにより、上場廃止基準に抵触する可能性はあります。

おわりに

継続企業の前提に関する注記が付される会社の中でも、危機的状況の度合いはかなり異なります。

上場企業であれば、会社がなくなることによる負の影響(従業員の失業、金融機関の貸付金の貸倒れなど)が大きいからか、毎年注記が付されていても金融機関の支援等を受けながら事業が継続し、そのうち注記が解消されるようなケースもあります。

とはいえ、「継続企業の前提に関する重要な疑義」という言葉の(見た目も含めた)重さや、「注記がついた会社」などと報道されることから、新たに付ける・付けないという時には、会社の上の方の人、監査対応をする経理部の人、監査チーム、審査担当者、重要案件専門の審査担当者の関係者間では、かなり大変な議論になってるんだろうなあ、と想像がつきます。

「継続企業の前提に関する重要な疑義」という言葉だけに注目するのではなく、注記を付すに至った状況や、会社が提示している対応策の現実味などにも注目すると、会社の危なさの度合いがより見えてくるのではないでしょうか。

今日の花

ポピー(ケシ科、原産地:西南アジア)

花屋さんで1本50円で売られているのを見て、即、買ってしまいました。蕾の状態で、花が開くのを楽しみにしていたのですが、ふと見ると蕾の重さに負けて茎が折れてた!慌てて折れたところから切り、水切りして、水に栄養剤(花屋さんでもらえる切花鮮度保持剤)を入れ、小さな花瓶にうつして待つこと数日。無事、花が咲きました。紙のような質感の花びらですよね。ポピー畑、行ってみたいな・・・。