前回に続き、個人事業を法人化すると何が変わるかをご紹介していきます。

給料をもらう

個人事業を営んでいるときは、事業で得た収入から事業のために使った経費を差し引いた残りであるもうけの中から、日々の生活費としてお金を引き出したり、税金(所得税と住民税)、健康保険料、年金等を支払います。

しかし、法人化すると、事業主は会社の「役員」(取締役など)となり、会社から給料をもらうことになります。給料の中から、税金、健康保険料、年金が差し引かれ、その残りの手取額を毎月受け取ります。

「税金、健康保険料、年金は差し引かれるのだから、結局変わらないのでは?」と思うかもしれませんが、給料は、会社の経費となりますので(役員の給料については要件あり)、給料を支給することで、会社の税金を減らす効果があります。

個人事業では、自分が自分に給料を払うことはできませんからね。

また、給料に関する税金の計算方法と事業から得たもうけに関する税金の計算方法は異なるため、同じ500万円が給料の額面である場合と、事業から得たもうけである場合とでは、税額に差が生じます。

事業所得と給与所得にかかる税金の違い

健康保険料、年金、その他の所得から差し引けるものは考慮外として、平成30年分の所得税(復興特別所得税除く)を計算してみます。住民税については、簡便的に所得税の課税所得に10%を掛けた金額とします。

給料の場合

給与所得の金額:5,000,000円-1,540,000円(給与所得控除)=3,460,000円

所得税の計算:3,460,000円×20%-427,500円=264,500円

住民税の計算:3,460,000円×10%=346,000円

所得税+住民税=264,500円+346,000円=610,500円

事業のもうけ(売上-経費)の場合

事業所得の金額:5,000,000円-650,000円(青色申告特別控除)=4,350,000円

所得税の計算:4,350,000円×20%-427,500円=442,500円

住民税の計算:4,350,000円×10%=435,000円

所得税+住民税=442,500円+435,000円=877,500円

2つの比較

給料の場合:610,500円

事業のもうけの場合:877,500円

610,500円-877,500円=△267,000円

267,000円異なります。

給与所得控除

差の原因はここです。

給与所得の金額:5,000,000円-1,540,000円(給与所得控除)=3,460,000円

事業所得の金額:5,000,000円-650,000円(青色申告特別控除)=4,350,000円

事業を営む人は、事業のためにかかった経費を「必要経費」として売上から差し引きますが、給料をもらう会社員一人一人が自分の「必要経費」を計算することは大変ですし、人によって不公平も生じます。そこで、給料の額面に応じて一定の方法で計算した「必要経費」に当たる金額を「給与所得控除」として差し引くことになっています。

事業所得から差し引いた「青色申告特別控除」は、青色申告を行うことを税務署から承認してもらい、一定のルールに従って記帳等を行う場合に、事業のもうけから差し引くことができる金額です。これは、もうけの金額にかかわらず、65万円(または10万円)の一律の金額です。

上述のとおり、給料は会社のもうけの中から払いますので、この2つで比較すると会社のもうけが考慮されておらず不公平、と思えるかもしれません。しかし、

売上-給料以外の経費≒給料の金額

となるように、年度の初めに計画を立て、計画どおりに事業が推移すれば、これに近い状態になることはあります。

損得のライン

「所得が1,000万円を超えたら法人の方が得」などとよく言われますが、現在、中小企業に適用される法人税の税率は15%~(2019年4月1日以降開始する事業年度は19%)、地方税と合わせても約22%(同約23%)と、税率が下がっていることもあり、所得税・法人税の数字だけで比較すると、もう少し所得が低くても法人の方が得ということになります。

もっとも、

売上-給料以外の経費≒給料の金額

では会社に一切利益が残らないので、会社にとって望ましくありません。

税金面で言えば、会社に残したい利益の金額、自分のために必要な給料の金額の両方を勘案し、法人税+所得税の試算を行い、事業所得にかかる所得税とを比較して損得を考えることになります。

法人化には、このほかにもメリット・デメリットもありますので、それらも考慮する必要があります。

次回へ続きます。

今日の花

スイートピー(マメ科、原産地:イタリア)

写真では青味がかっていますが、紫の斑入りのスイートピーです。美しいですよね。自分の腕では、こういう花は、どういけても、こんな風に花瓶に無造作にさした姿にかなわなくて、いけ終えた作品を見ると、なんとも言えない気持ちになります。