「工場見学に行こう!」と思い立ち、新日鐵住金(現:日本製鉄)君津製鐵所に来た私は、「工場見学を受け入れることには、会社としてどういうメリットがあるのだろう?」と疑問を抱きながら、見学のバスに乗り込みました。

見学の工程は、プラスチックリサイクル設備→高炉(外観)→熱延工場です。

鉄ができるまで

まず、鉄(製品)ができるまでをごくごく簡単にご紹介します。

鉄の原料といえば「鉄鉱石」が思い浮かぶでしょう。鉄(銑鉄:製品化する前の鉄)を作るためには、鉄鉱石のほか石灰石と石炭が必要です。

鉄鉱石と石灰石を高温で焼き固めて「焼結鉱」を作ります。

石炭を蒸し焼きにして「コークス」を作ります。コークスは、高純度の炭素の塊で、鉄鉱石から鉄を取り出すための還元剤・熱源として使用されます。

焼結鉱とコークスを「高炉」の中で高温で化学反応させて「銑鉄」を取り出します。真っ赤などろどろとした液状のものです。テレビなどでご覧になったことがあると、イメージできるかもしれません。

銑鉄から不純物を取り除いたり成分調整して「鋼」にしたのち、最終製品の形にあわせて3種類の直方体(「鋼片」)に成型します。

これを薄板、線材などの最終製品にしていきます。

プラスチックリサイクル設備

君津製鐵所では、プラスチックごみから炭素を取り出してコークスなどにするリサイクルが行われています。

プラスチックリサイクル設備では、一般家庭から排出されるプラスチックごみを分別処理し、コークス炉(石炭を蒸し焼きにしてコークスを取り出すための炉)に投入できるように成型しています。

プラスチックは水素と炭素の混合体ですので、石炭と一緒に蒸し焼きにすることで、コークスを取り出すことができます。また、この過程で、ガスと油(再生プラスチックの原料になる)を取り出すことができます。

高炉

高炉の中には入れず、遠くから眺めました。こんな感じです(撮影許可あり)。

大きい。そして美しい。日本の産業をずっと支えてきた、という威厳すら感じます。

手前には何本も線路が通っていますが、銑鉄やスラグ(銑鉄を取り出す際に分離される不純物)を次工程に運んだり、前工程から後工程へ仕掛品を運んだりするための電車・貨車が走るためのものです。

右手前に見える貨車に引っ張られているラグビーボールのような形をした金属製のタンクの中に銑鉄が入っています。

中に入っている銑鉄は1,500℃くらいとのことで、見ていたところからはずいぶん離れていたのに、通過するときには熱さを感じました!

熱延工場

熱延工場では、スラブという鋼片(形としてはかまぼこ板のよう)をローラーに通して薄く延ばし、薄板(自動車や家電製品等に利用される薄い鉄板)を作ります。

大きなローラーが並ぶ工場内の様子は圧巻です(ローラー、という言葉からイメージする規模感ではないのです)。

加熱しないと硬くて加工ができませんので、ローラーを通るスラブは真っ赤です。

工場内の2階くらいの高さのところに見学通路があり、生で(ガラス越しでなく)見学できたのですが、下をスラブが通るとやっぱり熱い!

ベルトコンベアの動く音、ローラーの間をスラブが通る音など、工場内で聞こえる音もかなり大きいです。

そして、大量の水。機械の過熱を防いだり、製品の仕上げ(かける水の量によって硬さが変わるらしい)のために、水がざあざあ出ています。この水どうしてるんだ?と思ったところ、90%は循環して使っているそうです(残り10%は熱で蒸発)。

その日の稼働状況により見学できる工場は異なるそうで、熱延工場を見学できたのはかなりラッキーでした。

街路樹

見学者だけでなく従業員の方もバスや車で移動するため、工場内を車が行き交います。

道路はきれいに整備されており、道路脇には木々が茂っています。敷地はすべて埋め立て地なので、工場開設当初はまったく植物はなかったのですが、植生の研究者の協力・指導を得て育て上げたそうです。CO2対策や遮熱対策にもなりますが、働く環境に緑があることは、目にも心にも優しいのではないでしょうか。

工場見学を受け入れる意味とは

工場の中を見たい、機械を見たい、鉄ができるところを見たい、という、単なる好奇心から申し込んだ工場見学でしたが、それだけではない収穫もありました。

知ってもらう

会社や会社で働く方にとっては、自分たちの作るもののことをより深く知ってもらうことで、企業としての価値や働く意欲を高められるのではないでしょうか。

プラスチックごみのリサイクルについては、恥ずかしながら、見学するまでまったく知りませんでした。このほかにも、海の鉄分(ミネラル)不足を改善するための取り組みや、貝殻のリサイクルなど、さまざまな社会貢献活動を行っているそうです。

このような社会貢献活動について知ってもらうことは、まさに、企業としての価値を高めることにつながります。

考えてもらう・行動してもらう

製造現場を見て、「家電製品を大事にしよう」「クリップ(鉄製です)を外すのがめんどくさいからと捨ててしまわないでちゃんと使おう」といった意識が、いい年した私にでさえ芽生えました。お子さんの見学もいらっしゃいましたが、若い感性が感じることなら、なおさら意味のあることだと思います。

また、リサイクル設備を見て、「大田区ではプラスチックは可燃ごみだけどいいのかな?」と考えたり(サーマルリサイクルといって、焼却施設で熱エネルギーを回収しているそうです)、「こんな風に再生されているなら、(セルフのカフェなどで)分別しているところではきちんと分別して捨てよう」という動機付けが生まれたりします。

知ったことに基づき、何かを考え、行動に移すことができれば、それは見学がもたらした社会貢献といえるのではないでしょうか。見学を受け入れることそのものが、社会貢献の一つなのだと思いました。

おわりに

初の大人の工場見学(プライベート版)は、かなり楽しかったです(往復のバスはつらかったですが)。

次はどこへ行こうと、企んでいるところです。

今日の花

スカシユリ(ユリ科、原産地:日本)

ユリってこんなに大きな花が咲くんだっけ?というくらい、直径20cmくらいの大きな花が咲いています。べろ~んとなる前に開きかけで撮りました(開ききった姿はもう1本のユリ参照)。家でいけ直したら、すっかりバランスが崩れてしまいました…。