来週後半には、3月決算の会社の第2四半期(4~9月期)の決算発表が本格化します。

決算といえば、監査、ですが、ここでいう決算発表は、公認会計士による監査対象ではありません。

株式市場の意義

株式会社が事業を行うためにはお金が必要ですが、そのお金を集めるための1つの手段に、たくさんの人に株式を買ってもらう(出資・投資してもらう)方法があります。

会社は、株式を買ってもらうわけですので、銀行からお金を借りる場合と異なり、株式を買ってくれた人(=株主)にお金を返す必要はありません。株主が株式を自由に売ってお金に換えることができなければ、こわくて株式を買えなくなってしまうため、株式を自由に売買できる仕組みが必要になります。これが株式市場です。

株式市場にはたくさんの人が関わるため、そこで株式を売ることができる会社(=上場会社)は限定されています。株式市場に参加することを認められるためには、一定の基準をクリアする必要があり、上場している間は、会社の経営や重要事項に関わる情報、すなわち、株主やこれからその会社の株式を買おうとしている人の判断に関わるような情報、をルールに従って継続的に発信することが求められます。

2つの制度

株式市場が健全に機能するためには、上場会社から発信される情報が、株式を売ろうか買おうかという投資判断を行うに当たって信頼するに足りるものであり、かつ、適時に発信されているものである必要があります。

このような情報の信頼性、適時性を確保するための大きな柱として、2つの制度があります。

金融商品取引法に基づく法定開示制度

金融商品取引法に基づき、有価証券報告書、四半期報告書などを財務局に提出するとともに、電子開示システム(EDINET)で公表する必要があります。

公表された情報はEDINETのホームページで誰でも閲覧できます。

金融証券取引所(株式市場)の自主規制に基づく適時開示制度

上場している会社とその子会社に関連する、決算情報や重要な決定事項(経営統合、役員人事、配当など)について、適時開示情報伝達システム(TDnet)で公表する必要があります。

公表された情報はTDnetのホームページで誰でも閲覧できます。

ニュースなどで報道される決算発表は、通常、こちらの適時開示制度に基づく決算情報の公表です。

2つの制度の違い ①公表内容とタイミング

決算情報に絞って2つの制度の違いを比較しています。

法定開示制度 適時開示制度
公表される書類
  • 有価証券報告書(年度末)
  • 四半期報告書(第1,2,3四半期末)
  • 決算短信(サマリー情報と添付資料)
公表される主な内容 有価証券報告書

→企業の概況、事業の状況、会社の状況(株式の所有状況、コーポレートガバナンスの状況など)、経理の状況(連結財務諸表、個別財務諸表、注記、セグメント情報など)

四半期報告書

→企業の概況、事業の状況、会社の状況(株式の所有状況など)、経理の状況(四半期連結財務諸表、注記(有価証券報告書より簡略)、セグメント情報など)

決算短信(サマリー情報)

→損益、資産・負債・自己資本、キャッシュ・フローの主な数値および関連する経営指標2年分、など

決算短信(添付資料)

→経営成績等の概況、会計基準の選択に関する基本的な考え方、連結財務諸表(注記は主なもののみ)

四半期決算短信(添付資料)

→連結財務諸表(注記は主なもののみ)

公表期限 有価証券報告書:決算期末後3ヶ月以内

四半期報告書:決算期末後45日以内

決算短信:決算期末後45日以内(30日以内が望ましい)

四半期決算短信:四半期決算の内容が定まったときに直ちに

その他
  • 監査報告書または四半期レビュー報告書が添付される
  • 経営者による記載内容の適正性に関する「確認書」が同時に提出される
  • 有価証券報告書と同時に「内部統制報告書」が提出される(監査報告書が添付される)
  • 将来の予測情報を積極的に公表することが求められる(予測を修正する場合には、修正に関する公表が必要)
  • 補足的な情報や説明資料をわかりやすく公表することが求められる

法定開示制度は、公表される情報の信頼性を監査によって担保することや、会社の状況や財務諸表についてより深く理解するための詳細な情報を提供することを目指しています。

これに対し、適時開示制度は、投資を行う人にとって、有益な情報をより早く提供することを目指しています。また、投資を行う人の中には、専門的な知識が比較的少ない一般の人も含まれるため、情報のわかりやすさも重視されています。

2つの制度の違い ②訂正について

法定開示制度

  • 「訂正報告書」の提出と公表が必要

適時開示制度

  • 「決算発表資料の訂正」の公表が必要
  • 有価証券報告書または四半期報告書の提出前に変更または訂正が生じた場合は、重要なものを除き、有価証券報告書または四半期報告書の提出後、遅滞なく行えばよい

2つの制度の違い ③公認会計士監査との関わり

公認会計士による監査・四半期レビューの対象となるのは、金融商品取引法に基づき公表される財務諸表だけです。(会社法に基づき作成される計算書類も公認会計士による監査の対象となり、有価証券報告書に先立ち、決算期末後1ヵ月半前後で監査報告書が提出されます。)

このため、決算短信には、投資判断を行う人への注意喚起として「決算短信は公認会計士又は監査法人の監査の対象外です」という文言が記載されています。

私が監査法人に勤めていたころは、

  • 決算短信で公表される情報のほとんどは、有価証券報告書・会社法の計算書類・四半期報告書にも含まれる
  • 決算短信を公表後に訂正を行うことはあまり好まれない(私の経験では、です、会社により違うかもしれません)

ことから、決算短信で公表される財務情報については、後日の訂正が生じないよう監査手続を実質的には終了させていましたし、決算短信のドラフトもチェックしていました。

ただ、本来、より早く開示されるべき決算短信を監査終了後に発表する会社が一定程度あったことが問題視され、2017年3月期から、決算短信の様式が簡略化する方向へ変更されました。監査の対象外である旨も、「この決算短信の開示時点において、金融商品取引法に基づく財務諸表の監査手続が実施中です。」という文言から、より明確化されて上記の文言となり、会社の責任で早期に公表すべき、と、改めて求められています。

ですので、今現在は、有価証券報告書・会社法の計算書類・四半期報告書と決算短信とは、もう少し切り離された存在になっているのかもしれません。

決算発表の影響

決算発表の翌日に株価が変動することは多いです。

決算の実績のほか、同じタイミングで発表されることの多い業績予想の修正も株価に影響します。年度の初めに立てた業績予想に達しないような決算が発表されれば、会社として通期の業績予想を修正していなくとも、悲観的な見方をされて株価が下がったり、業績予想を上方修正(もっと利益が出る)すれば株価は上がります。適時開示制度が信頼されているからこそ、即座に株価が変動する、ともいえます。

会社の状況は刻一刻と変化しますので、より早く、正確な情報が公表されることが、投資判断をする人にとって重要なのです。

おわり。

今日の花

モカラ(ラン科、原産地:熱帯中心)

モカラはランの一種ですが、ランにしては比較的お手頃価格で買えます。アレンジメントの花材でしたが、こういう斑点のような模様のものは初めて使いました。不思議にきれい。