給与にも、電子マネーの波がやってきそうです。

給与支給の原則

従業員の権利を守るため、給与の支給に当たっては、労働基準法第24条に5つの原則が定められています。

通貨払の原則

賃金は、通貨、すなわち現金で支払わなければなりません。

ただし、次のいずれかに当てはまる場合は、現金以外のもので支払うことができます。

  • 法令または労働協約で定める場合
  • 厚生労働省令で「確実な支払の方法」として定められている方法(=現金振込)による場合

(趣旨)通貨による賃金支払を義務付けることにより、価格が不明瞭で換価にも不便な現物給与を禁じる。

直接払の原則

賃金は、直接労働者に支払わなければなりません。

(趣旨) 中間搾取を排除し、労務を提供した労働者本人に賃金全額を支給する。

全額払の原則

賃金は、その全額を支払わなければなりません。

ただし、次のいずれかに当てはまる場合は、賃金の一部を差し引いて支払うことができます。

  • 法令に別段の定めがある場合(源泉所得税、社会保険料など)
  • 労働組合または労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者と書面による協定がある場合

(趣旨)賃金の一部を支払留保することによる労働者の引き止めを防ぐともに、直接払の原則と併せて、労働の対価をすべて労働者に支給する。

毎月払の原則

賃金は、毎月一回以上、支払わなければなりません。

(趣旨)賃金支払の間隔が開き過ぎることによる労働者の生活上の不安を除く。

一定期日払の原則

賃金は、一定の期日を定めて支払わなければなりません。

(趣旨)支払日が不安定で間隔が一定しないことによる労働者の計画的生活の困難を防ぐ。

参考:厚生労働省ホームページ(ホーム>政策について>分野別の政策一覧>雇用・労働>労働基準>よくある質問>労働基準情報:FAQ(よくある質問)-労働基準行政全般に関するQ&A)「賃金の支払い方法に関する法律上の定めについて教えてください。」(2018年12月6日閲覧)

給与の電子マネー払い解禁?

現在、法令で認められている支払方法は、原則:現金、例外(とはいえ大半):銀行振込ですが、この例外規定に電子マネーを加えることが検討される見込みです。

企業が指定したカードや決済アプリに給与が直接入金され、従業員はそのカードや決済アプリを使って買い物ができるという仕組みが想定されています。ATMで現金をおろす時間ととコストが削減されたり、クレジットカードが持てなくても、給与が入金されるカードなどを使ってキャッシュレスで買い物ができたり、カードやアプリにチャージするという手間がなくなったりします。

もともと、銀行口座の開設に手続を要する外国人労働者向けに、国家戦略特区(地域や分野を限定して、規制・制度の緩和や税制面の優遇を行う規制改革制度)に限って解禁することが要望された制度改革でしたが、全国での解禁を検討する方針のようです。

船の上で電子マネー

ある郵船会社が、船員に電子マネーで給与を支給する実証実験を行ったそうです。

船員の給与は、船内での日用品の購入や寄港地での買い物のため、一部は現金で支給され、残りは銀行振込されているそうです。

この方法は、船長の現金出納事務の手間、現金盗難の危険、船員が本国に送金する際の送金手数料の負担など課題が多くあります。

これらの課題を、船員に電子マネーで給与を支給することにより解決しようとしたのだそうです。

  • 仕組みとしては、船員のスマートフォン端末のアプリに給与を支給。
  • 船内の売店には対応端末を設置してアプリで買い物ができるようにし、寄港地でもアプリの利用ができる加盟店ではそのままアプリでの買い物が可能。
  • 家族への送金についても、家族がアプリをダウンロードすれば、アプリ間で送金できる。

この郵船会社ではネットワーク回線の構築と独自の決済アプリの開発を行いました。

開始時期については、今後検討される予定の法令改正を待つのか、労働組合との合意を取るのか(労働者にとってはメリット大きいですよね)はわかりませんが、海運業界では非常に注目されており、将来的には事業化も視野に入れているとのことです。

ちなみに、この検討は、会社(グループ会社含む。)の若手社員が、現場の気づきを活かした新しいアイデア等を発掘し、具現化・事業化することを支援する社内制度から生まれたものだそうです。

昨日も、大企業の若手デザイナーの挑戦を取り上げましたが、ここでも、若手の発想が生かされていました。

おわりに

生活の中で現金で支払うのは、病院の窓口での支払いとお稽古の月謝くらいで、残りは電子マネーかクレジットカードの私ですが、それでも、給与が全額スマートフォンに入っているような状態(なのかな?)になったら、それはそれでこわいような気もします。もし落としたら、とか、考えてしまう。セキュリティ面の自己防衛が必要ですが、みんながみんな完璧にできるわけでもないのではないかと思います。

こういう「なんとなくこわい」「いざというときはやっぱり現金」という考えが、社会のキャッシュレス化を阻害しているんでしょうけれども。

おわり。

今日の花

ギンヨウ(銀葉)アカシア(マメ科、原産地:オーストラリア)

「ミモザ」という名の黄色い花はご存じの方もいらっしゃるかもしれません。その一種です。先端のつぶがつぼみです。写真を撮った時には半分ドライになってましたが、それもきれいでした。