電子手形をご存じですか?

手形といえば、厚手のカラフルな紙に金額がプレスされているものをイメージされるのではないかと思います。

手形の世界にもペーパーレスは到来しており、それが「電子手形」です。

手形のしくみ

①振出

手形で仕入代金などを支払う(手形を振り出す)場合は、まず、銀行に当座預金口座を開き、銀行から手形用紙を購入します。手形用紙に金額、支払期日、振出人の署名等の必要な事項を記入し、金額に応じた印紙を貼付して、債権者に交付します。

②取立

手形を受け取った債権者は、支払期日の翌々日までに銀行に手形を呈示し、支払の請求をします。手形に記載されている支払銀行ではなく、通常自分が取引している銀行に手形を呈示することもできます。これを「取立の依頼」といいます。

取立依頼をされた銀行は、支払銀行が自行である場合は、銀行内部で交換することができますが、他行である場合は、「手形交換所」に持ち込みます。

③決済

手形交換所には、各銀行が手形を持ち寄りますので、その中で受取りと支払いの金額を計算し、差額を決済します。

決済後、支払銀行は支払人の口座から資金を引き出しますが、このとき、口座残高が不足して引き出すことができない状態が「不渡」です。

6ヵ月の間に不渡を2度出すと銀行取引停止処分を受け、資金繰りが極めて悪化し、実質的な倒産状態になる、というのは、聞いたことがあるのではないでしょうか。

手形の裏書

手形は多くの人の間を流通することを前提として作られている有価証券ですので、自分が受け取った手形で自分の仕入代金等の支払いをすることができます。これが「手形の裏書」です。手形の裏面に「この人に手形の金額を支払ってください」と、譲渡する相手の名前等を記入して相手に手渡すことから「裏書」といわれます。

支払いに充てられるのは手形の券面額です。複数枚を組み合わせたり、差額が不足するときは銀行振込にしたり、多いときは次回分の前払いとしたりします。

手形の割引

手形の支払期日前に銀行等に手形を買い取ってもらい、資金化することができます。これが「手形の割引」です。買い取りを依頼した人には、手数料や利息が差し引かれた金額が支払われるため「割引」といわれます。

実態としては、手形を担保にして銀行等から手形の券面額を借りている、という状態です。

電子記録債権とは

電子記録債権(以下、電子債権という。)とは、発生・譲渡等の要件を電子債権記録機関への記録原簿への電子記録とする、新しい類型の金銭債権です。

電子債権には、手形と売掛債権が含まれます。

電子債権記録機関とは、金融庁から認可を受けた電子債権の管理機関で、電子記録や債権内容の開示などを行う、電子債権の「登記所」のようなものです。メガバンクの100%子会社や全国銀行協会の100%子会社である「全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)」などがあります。

電子債権のメリット・デメリット

電子債権のメリット

事務手続の軽減

ペーパーレスですので、振出側では、手形用紙への必要事項の記入、手形の郵送といった事務手続がかかりません。

受取側では、銀行に手形の現物を渡して取立依頼することなく、期日に現金が振り込まれます。また、双方において、郵送・保管中の紛失・盗難のリスクがなくなります。

印紙税の負担削減

紙の手形には、手形金額100万円以下のもので200円、1,000万円以下のもので2,000円と、印紙の貼付が必要ですが、電子債権の場合は不要です(2019年1月22日現在)。

これは、紙の手形が印紙税がかかる対象(課税文書)とされているためですが、その要件は用紙に記載して相手方に交付するものです。電子債権は紙でないため、課税文書に該当しないのです。

裏書・割引

電子債権も、裏書(譲渡)や割引が可能です。

紙の手形の場合、金額を分けたければ手形そのものを分割して発行してもらうしかありませんが、電子債権の場合は、必要な金額だけ譲渡したり、割引することも可能です。

電子債権のデメリット

手数料

振出側(債務者)、取立側(債権者)ともに利用手数料がかかります。特に、振出側については、ある都市銀行の場合、紙の手形の発行にかかる費用は、発行手数料1枚21円+印紙税+郵送料に対し、電子債権の発行手数料は1件432円(同行宛、他行宛864円)かかります(2019年1月22日現在)。

高額の手形を多数発行する場合は電子債権の方が得ですが、そうでない場合は、電子債権の方が目に見えるコストはかかります。

ちなみに、回収側の手数料は、某取都市銀行のサイトによると、紙の手形の取立は756円、電子債権は216円(いずれも同行内)と、電子債権の手数料は紙の手形受取の1/3以下で(2019年1月22日現在)す。こちらは、電子の方が得ですね。

相手方の同意

電子債権により支払いを行うためには、債権者にも、電子債権の利用申込みをしてもらう必要があります。

債権者側には、銀行への取立依頼が不要になり、期日に銀行口座に振込される等、メリットの方がむしろ大きいと思われますが、債権者に説明し理解してもらい、利用申込みをしてもらうのは、立場上、ハードルが高いケースもあるでしょう。

システムがまだ周知されていない

これは私自身の感想ですが、例えば、発行するには?譲渡するには?不渡になったときどうなる?など、紙の手形であれば慣習としてわかっていた手続が、電子債権になるととたんにわからなくなります。慣れるまでは、一つ一つ調べる手間がかかりそうです。

でんさいネットのFAQを見てみると、項目数は全部で158(2019年1月22日現在)。丁寧に解説してくれてあるということなのですが、数の多さに「大変そう」という先入観を抱いてしまいました・・・。

おわりに

電子債権が導入されたのは2008年ですが、10年経っても、電子手形の発行枚数は全体の1割強にとどまっているそうです。

手数料、導入までのハードルなどもありますが、人手不足の建設業では、支払い方法を振込にして決済サイトを短縮することで下請けの確保を図るところもあり、このような状況も一因なのではないかと思います。

債権者側に立ち、かつ、売掛債権も含めて電子化すると、通常入金サイトの短縮ができない売掛債権までも早期に資金化でき、かなりメリットは大きくなります。現状は、手数料も含めて、債権者側にメリットが少し偏っているように思います。支払・回収の両方を使うとメリットがあることのアピールと、支払・回収の両方を使ってもらって採算が取れるような手数料体系になると、電子債権ももう少し、普及するのではないでしょうか。

今日の花

アネモネ(キンポウゲ科、原産地:地中海沿岸)

まるで造花のようですが、生の花です。花首の少し下に、茎をぐるりと取り囲むように葉がついています。1本の花にここについているだけです。葉から先の茎が光の方向に向かって伸びます。生命力を感じます。カメラのせいで実物より青みがかっていますが、美しい紫色の濃淡です。もともと好きな花でしたが、この1週間、いけばなのお稽古のために見続けて、ますます好きになりました。