クラウドファンディングという言葉も、だいぶ知られてきたでしょうか。

大企業×クラウドファンディング

昨日(2018年12月4日)、こんなイベントに参加しました。

なぜ、今?大企業がクラウドファンディングを使う理由 〜パナソニックデザインチームの挑戦〜

パナソニックのアプライアンス社(家電、空調製品等の製造・販売する社内カンパニー)デザインセンターの東京拠点は「FUTURE LIFE FACTORY」として、従来の枠にとらわれない新規商品のデザインと開発を行っています。

FUTURE LIFE FACTORYは、現在、株式会社Shiftallと共同して、クラウドファンディングで「WEAR SPACE」というウェアラブル端末の開発資金を募集しています。

WEAR SPACEは、周囲の音を低減するノイズキャンセリング機能付のヘッドホンと、視界を調整できるパーティションで構成された、「集中力を高めるウェアラブル端末」です。

こんな感じ。

(出典:GREEN FUNDINGホームページ「WEAR SPACE」のプロジェクトページより(2018年12月5日閲覧))

クラウドファンディングは、GREEN FUNDINGにて、目標金額1,500万円、募集期間2018年10月2日~2018年12月11日、All-or-Nothing方式で実施されています。

クラウドファンディングといえば、当初は、新興企業やNPO法人などが商品開発や活動のための資金を調達するのが中心でしたが、最近では、シャープ、富士通、東芝、キングジムなど、大企業もクラウドファンディングを使って商品開発を行っています。

パナソニックは、自社でデザイン・企画するものに限ると今回のWEAR SPACEが初であり、クラウドファンディングを使う大企業としてはかなり後発なのだそうです。

クラウドファンディングを使ったわけ

受容性評価

今回、クラウドファンディングを使った理由は、「受容性評価」にあるとのことでした。

WEAR SPACEは、2017年10月に海外のデザインコンテストで受賞するなど、以前から開発中の商品コンセプトや3Dプリンターで作った試作品を世に出していました。その後、ファッションブランド、利き酒、ADHD・ASDの方の支援団体などとコラボレーションしたり、「SXSW 2018」(アメリカで開催される音楽、映画、新規事業・技術などの大規模イベント)で高評価を得たりしました。

とはいえ、デザインやコンセプトが評価されているからといって一般販売して成功するとは限らず、これまでなかった商品のため市場調査を行うことも難しい。しかし、クラウドファンディングを使えば、お金を出して、手元に届くのを待ってでも、この商品を欲しいと思ってくれる人の数を把握することができます。

これが「受容性評価」の意味するところです。

プロジェクトの中止決定

また、目標金額に達成しなかったら受容性がない(市場に出しても売れない)と判断し、プロジェクトを途中で止めることができるのもメリットとのことです。

パナソニックのような大きな会社であればなおさら、一度プロジェクトが始動したら、設備や開発に資金と人を投入するため、それを途中で止めるという判断は難しくなるでしょう。クラウドファンディングの成否で中止の判断を下せれば、残念ではあっても、資金や人をそれ以上無駄にすることはありません。

クラウドファンディング=資金調達という側面のみ考えていたため、市場調査やプロジェクトの投資判断としてクラウドファンディングを利用する、というのは、私にとって新たな視点でした。

クラウドファンディング事業者の選択

クラウドファンディングは、仲介する事業者が運営するインターネットサイトを利用して行われます。有名なところですと、Makuake(株式会社マクアケ)、FAAVO(株式会社CAMPFIE)、Readyfor(READYFOR株式会社)、GREEN FUNDING(株式会社ワンモア)などがあります。

寄付型と購入型の両方、All-or-NothingとAll-inの両方を取り扱っている場合もあれば、種類も成立方式もいずれか片方だったり、種類は片方・成立方式は両方、などサイトにより取り扱いは異なります。

取り扱うプロジェクト(商品)の内容、目標金額の設定と実際に集めている金額の規模、プロジェクト(商品)の見せ方(PR動画など)などは、サイトによりかなり特色があって異なります。

WEAR SPACEは、サイトで取り扱われている他のプロジェクトとの親和性、実店舗での展示などを勘案し、CCCグループであるGREEN FUNDINGを選んだとのことです。

クラウドファンディングで資金を集めようとするときは、まずはサイトの選定が非常に重要と感じました。

[参考]クラウドファンディング関連用語

WEAR SPACE

大切にしたもの

世の流れは、オフィスから固定デスクがなくなったり、カフェなどで仕事したりと、オープンな環境で仕事する方向に向かっています。しかし、誰しも集中する時間や一人になる時間はほしいはず。プログラマーやエンジニアなど、そういう時間が「ほしい」ではなく「必要」な仕事もあります。

WEAR SPACEは、世の流れと違うからと表に出しづらかった思いを汲み取って商品化したもの。

「多様性を尊重する」という言い方をしていました。

一見するとありとあらゆる物がある時代ですが、その中で眠っているニーズを見出すポイントは、「多様性」や「他との違い」を認識し、それを受け容れるところにあるのかな、と思いました。

これは、形ある物だけに限らず、無形のサービスにも当てはまります。自分のサービスを考えるヒントにもなります。

WEAR SPACEの装着感

ヘッドホン部分ですが、意外と軽くフィット感があり、短時間つけていた限りでは圧迫感や痛みもありませんでした。

ノイズキャンセリングは、会話はうっすら聞こえるけれども雑音がなくなり、すーっと集中できそうな感覚でした。遮音の程度は3段階調整できます。

パーテーション部分は視野の約6割を隠すとのことですが、かなり狭いという印象でした。パソコンを1画面で集中して使うときはいいけれど、書類や2画面見ながら作業するには向かないかもしれません。頭が動くとパーテーションも揺れるのが少し気になりました。

移動中に新幹線や飛行機で使いたいという方からは、持ち運ぶのに大きすぎる、という感想がありました。

つけたところを自撮りしておくべきでした(笑)。

【2018年12月7日追記】製品版に向けて、ヘッドフォンの位置調整とパーティションで制限する視界の範囲の調整ができるパーツを開発中とのことです。「視野が狭い」という印象は、製品版では解消されるかもしれません!

おわりに

なぜクラウドファンディングを使ったかというのがテーマでしたが、私としては、パナソニックという大企業の組織の中でまったく新しい商品をデザインしクラウドファンディングに持っていくまでのプロセスと苦労、メンバーを動かす熱意や商品にかける想いを率直に聞けたのがとても心に残りました。

「デザインでとどまるのではなく、商品として使ってもらうことによって人々の生活を変えていきたい。」

「自分たちが成功することによって、若手や他の技術者に「自分もやってみたい」と思ってもらえれば、より新しい商品を作れるのではないか。」

一言一句同じではありませんが、大企業の組織の中にありながら、自分のやりたいことをやりながら生きる。大変なことだけれども、とても前向きにしなやかに、そういう生き方をしているように見えました。

彼らの生み出しそうとしている商品は、世に出ることで、もっともっと可能性が広がるのではないかと思います。募集期間終了(2018年12月11日)まであと6日。プロジェクトが成立することを心から願っています。

【2018年12月10日追記】2018年12月8日、プロジェクトが成立しました!

GREEN FUNDING「WARE SPACE」のページへリンク(別のウィンドウが開きます)

今日の花

スカビオサ(マツムシソウ科、原産地:西ヨーロッパ)

可憐な花、と思うものはいくつかありますが、私の中でその代表格の1つです。茎が細く、小さな花が集まっており、花びらも薄いです。茎の線を活かして長く使うのが好きです。