個人事業や不動産賃貸などのもうけについて所得税の確定申告をする方法には、

  • 青色申告
  • 白色申告

の2つがあります。

青色申告には、

  • あらかじめ承認申請書を提出する必要がある(例外的な事項がない限り、承認されます)
  • 帳簿をつける必要がある
  • 決算書の記載内容が白色申告(収支内訳書)に比べてちょっと多い

といったきまりごとがあるかわりに、

  • もうけが出た場合に、青色申告をしていることをもって、もうけから一定の金額をマイナスできる
  • 少額減価償却資産(30万円未満の固定資産を買った年に全額経費にできる)等の優遇措置がある
  • 赤字を3年間繰り越して、次の年以降に出たもうけと相殺することができる

といったメリットがあります。

今日取り上げるのは、赤字の繰り越しのメリットについてのルールです。

純損失の繰越控除とは

事業等で赤字が生じ、他から得たもうけ(給料等)と相殺してもなお赤字が残る場合、この赤字を「純損失」といいます。

青色申告で確定申告をしていて純損失が生じた場合、純損失を繰り越し、翌年以降の黒字と相殺することができます。

これを「純損失の繰越控除」といいます。

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純損失の繰越控除の適用を受けるためには、次の要件があります。

  • 純損失が生じた年に青色申告書を提出していること
  • その後連続して確定申告書を提出していること
  • 必要な明細書を確定申告書と一緒に提出すること

第一項又は第二項の規定(筆者注:純損失の繰越控除の規定)は、これらの規定に規定する居住者が純損失の金額が生じた年分の所得税につき確定申告書を提出し、かつ、それぞれその後において連続して確定申告書を提出している場合に限り、適用する。

(所得税法第70条第4項)

確定申告には、上記のように、青色申告と白色申告とがあります。

「純損失の金額が生じた年分の所得税につき確定申告書を提出し」の部分の「確定申告書」は、青色申告書である必要があります(「その年分の所得税につき青色申告書を提出している年に限る」(所得税法第70条第1項))。

しかし、「それぞれその後において連続して確定申告書を提出し」の部分の「確定申告書」については、上記のような制約はないため、白色申告であっても問題ありません。

また、確定申告には提出期限があります。

こちらについても、現在は、期限内に提出することが文言上要件とはされていませんので、期限後に提出する場合も含まれます。

ただし、すべてのケースにおいて、期限後に提出する場合が含まれるわけではありません。

「その後において連続して」の意味

例で見てみましょう。

確定申告は毎年必要、申告書を提出した年は青色申告で、必要な明細書等は添付したものとします。

ケース1

  • X1年…純損失を申告
  • X2年…申告を失念(今に至る)
  • X3年…純損失を申告

X4年の確定申告では、X3年分の純損失は繰越控除できます。では、X1年分の純損失はどうでしょうか?

純損失の繰越期間は3年間ですので、X2年、X3年、X4年が対象となります。

しかし、「その後において連続して」、というのは、申告書提出の前後関係を守ることが想定されています。

従って、X2年で申告を行わず、X3年の申告を先に行っている場合は、申告書提出の前後関係が守られていないため、X4年の確定申告でX1年の純損失を繰越控除することはできないと考えられます。

措置法第37条の12の2第8項に「上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の所得税につき…確定申告書を提出し、かつ、その後において連続して確定申告書を提出している場合であって」と規定されているところ、上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の確定申告書の提出と本件特例の適用を受ける年分の確定申告書の提出との先後関係については、同項が「その後において」と規定していることからすれば、上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の確定申告書の提出が先であることは、文理上明らかである。

(中略) 同条第8項の規定は、本件特例の適用を受ける年分より前の各年分に生じていた当該譲渡損失の金額と本件特例の適用を受ける年分において控除する当該譲渡損失の金額とを逐次明らかにさせることにより、税額の計算の安定を確保し、もって租税法律関係の明確化を図るものと解される。

そうすると、措置法第37条の12の2第8項に規定する「その後において連続して確定申告書を提出している場合」とは、上場株式等に係る譲渡損失が生じた年分の確定申告書を提出した後に、その後の年分の確定申告書が順次連続して提出されている場合をいうものと解される。

(平成28年3月7日裁決)

ケース2

  • Y1年…純損失だが申告していない
  • Y2年…純損失だが申告していない

Y3年の確定申告と同時に、Y1年分とY2年分をまとめて期限後申告した場合、Y1年分とY2年分の純損失を繰越控除できるでしょうか?

この場合、Y3年分の確定申告を行う時点では、Y1年分とY2年分の確定申告を行っていないため、そもそも「その後において連続して確定申告書を提出している」という状態にありません。

このため、Y3年分の確定申告と同時に、Y1年分とY2年分をまとめて期限後申告した場合には、Y3年分の確定申告で、Y1年分とY2年分の純損失は繰越控除することはできないと考えられます。

各事業年度の所得の金額の計算上繰越欠損金を損金の額に算入するかどうかは、遅くとも、内国法人が当該各事業年度に係る確定申告書を提出する時までに定まっていなければならない。そうすると、法人税法第57条第1項の適用要件を規定する同条第10項にいう「その後において連続して確定申告書を提出している場合」に該当するかどうかも、当該各事業年度に係る確定申告書の提出時までに定まっていなければならないことになる。

したがって、法人税法第57条第10項に規定する「その後において連続して確定申告書を提出している場合」とは、繰越欠損金を損金の額に算入しようとする事業年度に係る確定申告書の提出時において、欠損金額が生じた事業年度後の各事業年度について確定申告書が提出済みである場合をいうものと解される。

(平成20年3月14日裁決(裁決事例集No.75))

期限内申告が要件となっていないとはいえ、提出の前後関係は守ることが法の趣旨として求められているようです。

少しずつ日をずらして順番に期限後申告したらどうなるのかなという疑問はありますが…。

おわりに

今回は若干ニッチなテーマで引用も多く、複雑な話になってしまいました。

後からでもいいやではなく、やるべきことは締め切りまでにやるのが一番です、という結論です。

今日の花

カーネーション(ナデシコ科、原産地:南ヨーロッパ・地中海沿岸)

カーネーションは、色がはっきりしていて茎がまっすぐで、ニガテな花の一つですが、これは優しいピンク色にふちどりが入っていて、かわいかったです。最近、くすんだベージュやこのような薄いピンク色のカーネーションが増えてきたように思います。ナチュラル志向?なのか、ニーズに合わせて品種が開発されてきているのかもしれません。

編集後記

「後からでもいいやではなく、やるべきことは締め切りまでにやるのが一番」、と言ってる自分が、水曜更新を守れていないのはダメですね…。