5月15日は、3月決算企業の決算短信の提出期限でした。
日経新聞には、決算や今期の見通しについてのコメントが日々掲載されていました。
その中でふと目に止まったのが、某鉄道会社の社長のコメント。
2019年度の定期券利用者は上期(4~9月)に前年同期比増、下期(10~3月)に前年同期比減と予想、特急列車の予約も9月に集中すると見ている、とのこと。
消費税増税前の駆け込み需要というわけです。
「5%から8%に上がったときと同じ」と、さほど気にしていなかったのですが、改めて、旅客運賃にかかる税率変更時の経過措置を確認しました。
税率変更時の原則的取扱い
新消費税法は、施行日である2019年10月1日以後に行われる資産の譲渡等および課税仕入れ等について適用されます。
例えば、2019年9月30日に仕入れた商品を2019年10月1日に販売した場合、
- 仕入れた商品→施行日前日→8%
- 販売した商品→施行日以後→10%
の消費税率が適用されます。
経過措置
特定の取引については、施行日以後も旧税率である8%が適用されます。主な取引は次のとおりです。
- 旅客運賃等
- 電気料金等
- 請負工事等
- 資産の貸付け
- 冠婚葬祭施設の提供等の指定役務の提供
- 予約販売に係る書籍等
- 特定新聞
- 通信販売
- 有料老人ホーム
- 家電リサイクル法に規定する再商品化等
定期券や特急列車の駆け込み需要は、①旅客運賃等の経過措置に該当します。
具体的内容
次の場合の旅客運賃には、旧税率(8%)が適用されます。
- 乗車券等を施行日前日までに販売している
- 乗車が施行日以後に行われる
鉄道を例に取ると、次のようなケースは、いずれも販売時(購入時)に適用される税率は8%となります。
- 10月5日に乗車する指定席特急券を9月30日に購入
- 9月25日から11月24日まで利用できる回数券を9月25日に購入
- 10月1日から3月31日まで利用できる定期券を9月30日に購入
なお、この経過措置は、旅客運賃(電車、バス、飛行機、船舶等)以外にも、映画・演劇・コンサートの前売り、スポーツの年間予約席等にも適用されます。
ICカードへのチャージ
ICカードへのチャージは乗車券の販売に該当しません。
従って、9月中にチャージしたICカードを使って10月1日以降に電車に乗車する場合は、10%の税率が適用されます。
チケットレス
新幹線乗車券、航空券などでは、券面が発行されないケースもあります。
券面の発行の有無は経過措置の適用要件に含まれていませんので、チケットレスであっても、上記の条件を満たして購入した乗車券等については、8%の税率が適用されます。
アップグレード・ダウングレード
経過措置により8%の税率で購入した航空券について、アップグレードの申し込みを10月1日以後に行った場合、追加料金については施行日以前に購入(販売)したものではありませんので、10%の税率が適用されます。
逆に、ダウングレードの申し込みを10月1日以後に行った場合には、購入時に適用された8%の税率によって返金額が計算されます。
いったんキャンセルして購入し直す場合は、もちろん、新たに購入する航空券・乗車券等には10%の税率が適用されます。
通勤手当の支給にかかる会計・税務処理
半年に1度、通勤手当として6ヵ月分の定期代を支給する、という会社もあると思います。
その場合、原則的な会計処理は次のとおりです。
支給時
借方 | 貸方 | ||
前払費用 | 12,000 | 現金 | 12,000 |
毎月
借方 | 貸方 | ||
旅費交通費 | 2,000 | 前払費用 | 2,000 |
消費税率は?
例えば、10月以降の定期券を購入する費用として、9月に通勤手当を支給するとします。
通勤手当は、従業員が通勤に必要な交通機関の利用等のために支払う費用に充てるものであり、その費用には消費税がかかっているため、課税仕入となります。
では、その課税仕入の時期はいつかというと、課税売上の時期と同じと規定されています。販売する側が資産の譲渡や役務の提供等を行った時期と同じ、ということです。
9月に通勤手当を支給する場合、会社としては9月に交通機関に支払うと考える→交通機関(鉄道会社等)は9月に販売したものは8%の税率適用→9月に支給した通勤手当は8%の税率適用、となるものと考えられます。
この考え方によれば、前払費用から振り替える処理をする場合も、8%の税率で振り替えていく、ということになります。
今日の花
宿根(しゅっこん)スイートピー(マメ科、原産地:ヨーロッパ)
花屋さんでは「サマースイートピー」の名前で売られていました。春に出回るふわふわひらひらなスイートピーの後に出回ります。宿根スイートピーの方がツルが伸びていたり、花もマメの花のような丸い形で、よりマメ科の植物らしく思えます。これはとりわけ紫と白のグラデーションが美しかったです。
4月上旬、近くのJRの駅に定期券を購入する人のものすごい行列ができていました。
「定期券は利用開始日の14日前から購入できます」
「(カレンダーに印がついている)この期間は窓口が大変混雑します」
というポスターが3月中から掲示されていたにもかかわらず、です。
学生さんであれば定期券の購入には通学証明書が必要ですので、新学期が始まってから購入せざるを得ませんが、大人の方も多く、行列嫌いの自分にとっては見るだけでもげんなりするような列でした。定期券を使わずに働いているのがありがたかったです。
給与支給日が25日でその時に税率8%の計算で6ヵ月分の定期代が支給されるとすると、9月末にもあの行列が再現されることになるのでしょう…。