税理士事務所での日々

転職先は、個人の税理士事務所でした。

元々、何かしらのビジョンがあってなった会計士ではありませんでしたが、それでも、会計士を選んだのは、「税理士→税金を払わないためにあの手この手を探す」というイメージを持っていたのが理由の一つであり、それはこの時もあまり変わっていませんでした。

しかし、会社と税理士の関係は、監査する側・される側の埋められない隔たりがある関係よりももっと、人の懐に深く入り込むような仕事なのではないか、そしてそれに対して「人と関わる仕事がしたい」と思った自分がどう感じるのか、試してみたいと思いました。

誰かのために何かをする

そもそも税務の知識はほとんどなかったですし、お客様である会社は、監査法人のクライアントとは想像以上に何もかもが違っていました。

年商や利益が何桁も違う、「重要性の基準値未満なのでパス」(監査は監査手続実施に際しての重要性の基準金額を定め、それを下回る会計処理の間違いなどは基本的に無視する)ができない、社長が何を重視しているかまったく違う、会計処理の話が通じない、質問したり資料をお願いしたりしても反応がない。しかもいきなり10数社を担当し、それぞれが規模も業種も社長の個性もまったく違う・・・。

初めは驚きと失敗の連続でした。でも、だんだん楽しくなってきました。

どんな方なのかもわからない社長と話しながら、社長は何を求めているのか、そのために自分は何をすべきか、何ができるのかを必死に考えました。社長の意図を汲み取れなかったり、自分の力が足りなかったりして、十分に応えられなかったこともありましたが、喜んでいただけたときには、それはうれしいものでした。

失敗や成功を一つ一つ重ねていくと、この人のためにもっとがんばろうと思えました。

誰かのために何かをする、というプロセスの積み重ねが自分に力を与えてくれ、これなら税理士を生涯の仕事にできると思いました。

退職から開業へ

初めの2年くらいは仕事を覚えるのに必死で、3年目くらいからようやく自分の好きなように仕事ができるようになってきました。

他方、担当する会社の数も増えてきて、そうなると(自分の性格からなのですが)自分が背負い込むものが徐々に多くなりました。仕事に慣れて「こうしてみたい」「ああしてみたい」という思いが出てきたにもかかわらず、目先の仕事をこなすのに精一杯で思うようにいかない、というもどかしさやしんどさが募り、違う場所でもう少し違う働き方がしたいと考えるようになりました。

監査法人を辞めて税理士事務所に転職する、と決めた時点で、もし、自分が税理士の仕事を生涯の仕事としてやっていけそうだったら、せっかく資格を持っているのだから、いずれ税理士登録をして自分の事務所を持つことになるだろうと思っていました。

とはいえ、辞めてすぐ開業しようと思っていたわけではなく、当初は他の税理士事務所に転職するつもりでした。開業するためには何ヵ所かの税理士事務所で経験するのが普通だと思っていましたし、1つの事務所・1人の先生のやり方しか知らないというのも実際不安だったためです。

しかし、なかなか良い条件がなく、次第に、1つの事務所・1人の先生が、2つの事務所・2人の先生に増えたところでどれだけ違いがあるのだろうと思い始め、それならもう開業してしまおうと、結局、退職して即開業することにしました。前言撤回し、退職即開業することを認めてくれた、事務所の所長先生には感謝しています。

おわり。

今日の花

鶏頭(ヒユ科、原産地:アジア、アフリカの熱帯(推定))

ヒユ=熱帯に多い草、だそうです。フェルトのようなもこもこ感。この花を見ると秋の訪れを感じます。