企業は販売促進のためにさまざまな活動を行いますが、その際の会計・税務処理について取り上げます。

広告宣伝費と交際費の枠組み

「広告宣伝費」とは、という定義は、法律上ありませんが、「交際費等」については次のような定義があります。

交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下この項において「接待等」という。)のために支出するもの(次に掲げる費用のいずれかに該当するものを除く。)(租税特別措置法61条の4第4項)

除かれるものは、次のとおりです。

  1. 従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
  2. 1名あたり5,000円以下の飲食費
  3. カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手拭いその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用
  4. 会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用
  5. 新聞、雑誌等、放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、または放送のための取材に通常要する費用

③は広告宣伝費に当たるものですね。

「法人税基本通達」における広告宣伝費の例示

税法基本通達とは

例示を挙げる前に、税法の基本通達について簡単にご紹介します。

「通達」とは行政機関の内部文書であり、税法の基本通達であれば、国税庁長官から国税局長宛の内部文書です。

法人税基本通達の位置付けは、「適正な企業会計慣行を尊重しつつ個別的事情に即した弾力的な課税処理を行なうための基準」(出典:直審(法)25(例規)昭和44年5月1日「法人税基本通達の制定について」)とされています。

あくまでも例示や目安であり、実際の処理に当たっては、法の趣旨、一般に公正妥当な会計基準・会計慣行、社会通念などを勘案すべき、ということです。

例示とはいえ、例示が複数あれば共通する要素が見えてきます。例示にない事項に当たった時には、法の趣旨、一般に公正妥当な会計基準・会計慣行、社会通念などを踏まえつつ、その共通する要素に合致するかどうかを検討していきます。

広告宣伝費の例示

広告宣伝費であって交際費には含まれない、と例示されているのは次の事項です(下線とカッコ内は筆者)。

  • 製造業者や卸売業者が、抽選により、一般消費者に対し金品を交付するための費用または一般消費者を旅行、観劇などに招待するための費用
  • 製造業者や卸売業者が、金品引換券付販売(ポイントカードや引換券をつけて販売すること)に伴って一般消費者に金品を交付するための費用
  • 製造業者や販売業者が、一定の商品を購入する一般消費者を旅行、観劇などに招待することをあらかじめ広告宣伝し、その商品を購入した一般消費者を招待するための費用
  • 小売業者が商品を購入した一般消費者に対し景品を交付するための費用
  • 一般の工場見学者などに製品の試飲、試食をさせるための費用
  • 得意先などに対して見本品や試用品を提供するために通常要する費用
  • 製造業者や卸売業者が、一般消費者に対して自己の製品や取扱商品に関してのモニターやアンケートを依頼した場合に、その謝礼として金品を交付するための費用

共通点

共通する要素は、

  1. 一般消費者(不特定多数の者)を対象とすること
  2. 広告宣伝効果を期待すること
  3. 通常要する費用(極端に高額でない)

の3点です。

一般消費者

例えば、次のように、事業に関連の強い特定の分野の対象に限られる場合は「一般消費者」には該当せず、支出する費用は交際費となります。

  • 医薬品の製造業者や販売業者が医師や病院を対象とする場合
  • 化粧品の製造業者や販売業者が美容業者や理容業者を対象とする場合
  • 建築材料の製造業者や販売業者が、大工、左官などの建築業者を対象とする場合
  • 飼料、肥料などの農業用資材の製造業者や販売業者が農家を対象とする場合
  • 機械又は工具の製造業者や販売業者が鉄工業者を対象とする場合

広告宣伝効果

イベントなどに「協賛金」として支出する場合があります。

名目が「協賛金」であっても、協賛金を支出した企業名が雑誌・チラシ等に掲載されたり、会場内に掲示されたりする場合には、イベントの来場者等の一般消費者に対する広告宣伝効果がありますので、広告宣伝費となります。

ポイントの付与

Tポイント、Ponta、クレジットカードの利用に応じてたまるポイントなどは、一般消費者を対象として広告宣伝(利用促進)のために発行されるものですので、広告宣伝費(あるいは販売促進費)に該当します。

ただし、会計・税務上は、ポイントを付与した時ではなく、ポイントが利用されたときに費用として計上します。

関連投稿:「ポイント使うとポイント5倍で誰が得する?(前編)」「ポイント使うとポイント5倍で誰が得する?(後編)」

おわりに

広告宣伝費と交際費との区別は、不特定多数の人相手か特定の人相手かが1つの判断基準になりますので、ここは比較的わかりやすいのではないかと思います。

交際費は原則として損金不算入ですが、中小企業には控除枠(年間800万円)があり、これを使い切るケースはめったにないため、あまり神経質にはならなくとも税金計算への影響は少ないです。

ただ、経営を判断するうえでは、支出した経費の要否を後日振り返ることが大切です。効果の有無を測定し、経費の要否を判断するためには、「交際費」なのか「広告宣伝費」なのかを判断基準に従って正しく区分しておくことが必要です。

今日の花

デルフィニウム(キンポウゲ科、原産地:ヨーロッパ・西アジア・中国)

「ウム」で終わる名前から何となくランの仲間のような気がしますがまったく別物です。色は白のほか水色、濃い青、ピンクなどがあります。花の付き方も、これは先が枝分かれしていますが、茎に密集して筒のように花がつくものもあります。薄い花びらがふわふわと華奢でかわいらしいのですが、ごらんのとおり茎が細く、いけばなでは思ったところに挿すのにいつも苦労しています。

編集後記

法人税は「法人税基本通達」、所得税は「所得税基本通達」、消費税は「消費税法基本通達」なんですね(またもや無知を思い知らされる)。各基本通達の本文の章立ての上に「前文・説明文」というリンクがあり、そこから今日ご紹介した「法人税基本通達の制定について」も見ることができます。

1日1新

GINZA SIXの屋上庭園(近くを通りかかることは何度もあったもののGINZA SIXに足を踏み入れるのも初めて。屋上と6Fの蔦屋書店以外は縁がなさそうでした…。)

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